あのテレビ時代劇はなぜウケたのか? アンケート上位4作品を女流時代劇研究家・ペリー荻野氏が語る。
順位 | 作品 | 票数 | 寸評 |
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1 | 水戸黄門 (TBS系) |
130 | 69年にスタートした国民的番組。初代の黄門様 は東野英治郎、現在の里見浩太朗は5代目 |
2 | 必殺シリーズ (朝日放送・テレビ朝日系) |
126 | 人気を決定づけた「必殺仕置人」はシリーズ第 2弾。藤田まことの中村主水が初登場した |
3 | 遠山の金さん (テレ朝系) |
101 | テレビで最初にヒットさせたのが70年の中村梅 之助。後に杉良太郎や松方弘樹も演じた |
4 | 暴れん坊将軍 (テレ朝系) |
100 | 同一主役ドラマでは「銭形平次(大川橋蔵)」に 次ぐ放送832回を記録した長寿時代劇シリーズ |
5 | 大奥 (フジテレビ系) |
99 | 江戸城の「大奥」で女の愛憎が火花を散らす物 語。第1弾は68年に放送され、大ヒット |
6 | 鬼平犯科帳 (テレ朝系・フジ系) |
84 | 鬼平はすっかり中村吉右衛門のハマリ役だが、 実はテレビでは4代目。初代は父の幸四郎 |
7 | 大岡越前 (TBS系) |
57 | 「遠山の金さん」と並ぶ、テレビ時代劇の「2 大名奉行」の1人。加藤剛のマジメさが印象的 |
8 | 桃太郎侍 (日テレ系) |
52 | 「ーつ、人の世の~」と歌いながら“鬼退治”す る桃太郎。高橋英樹主演版は全258話 |
9 | 三匹が斬る! (テレ朝系) |
49 | 初期メンバーは殿様(高橋英樹)、千石(役所 広司)、たこ(春風亭小朝)でスタートした |
10 | 銭形平次 (フジ系・日テレ系・テレ朝系) |
44 | テレビの大川橋蔵版は66年に白黒番組でスター ト以来18年、全888 話の大長寿番組 |
11 | 木枯し紋次郎 (フジ系) |
33 | 破れた三度傘に、長い楊枝。「あっしには関わ りの…」の名セリフで、中村敦夫の出世作 |
12 | 座頭市 (フジ系) |
30 | 映画版も元祖はもちろん勝新太郎。テレビ版は 74年から4作で計100 話制作された |
13 | 眠狂四郎 (日テレ系・フジ系・テレビ東京) |
29 | 原作者・柴田錬三郎氏が絶賛した田村正和主演 のシリーズは72年、フジ系で全26話を放送 |
14 | 大江戸捜査網 (テレ東) |
24 | 秘密捜査員・隠密同心たちが江戸の悪を斬り捨 てていく。第1シリーズの主演は杉良太郎 |
15 | 子連れ狼 (日テレ系・テレ朝系) |
23 | テレビ版では萬屋錦之介が有名だが田村正和、 北大路欣也らも演じた。映画は若山富三郎。 |
16 | 浮浪雲 (テレ朝系・TBS系) |
21 | 78年に渡哲也・桃井かおりコンビで、90年はビ ートたけし・大原麗子のコンビで放送 |
17 | 服部半蔵影の軍団 (フジ系) |
20 | 「影の軍団」シリーズの始まりは80年。千葉真 一を中心にした伊賀忍者集団の戦い |
18 | 江戸を斬る (TBS系) |
18 | 75年からの西郷輝彦版の第2シリーズが人気。 松坂慶子の紫頭巾など脇キャラも魅力的 |
19 | 女ねずみ小僧 (フジ系) |
16 | 71年からの小川真由美シリーズと、89年の大地 真央版がある。どちらも色っぽい |
20 | 御家人斬九郎 (フジ系) |
15 | 「正義感なんて、スッカラカン」の斬九郎(渡 辺謙)のキャラクターがウケた |
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「水戸黄門」は見ていて安心感があることは大事なのですが、〈ロードムービー〉であることがポイントの1つです。深刻な事件が起きても、次回には別のところへ旅して行ってしまうので、スッキリ感があります。
もう1つが疑似家族のような〈ホームドラマ〉であることですね。黄門様はお父様的な立場。そこに助さん、格さんという丈夫な息子2人がいて、ちょっとおっちょこちょいな三男坊のうっかり八兵衛。お銀がしっかり者の娘のようで、ちょい不良の弥七もいる。それでみんながお父さんを大事にする。ある意味、理想の老後です。しっかりした子供たちに支えられて、自分は足腰が丈夫で、諸国を漫遊しておいしいものを食べて‥‥。しかも由美かおるさんみたいな美女から「御隠居さま」と慕われる。主役がいちばん年上。懐かしい昭和の家族の物語の形をちゃんと継承しています。
「必殺シリーズ」はホームドラマの裏返しです。みんな幸せじゃないですね。中村主水は、いちおう家庭はあるんですけど、理想的な家庭にはとても見えない。そこには時代的な背景が影響しています。「木枯し紋次郎」や「必殺シリーズ」が出てきたのは72年。高度成長にかげりが出てきた。会社・組織から離れて自分だけのために生きる、というのにみんなが憧れた。アウトローの時代になったんですね。
もう1つ必殺シリーズの凄いところは、エンターテインメント性です。とんでもない殺し技を考えたり、まさか?という人が殺し屋をやる。だって森田健作は今、知事ですよ。あの知事だって人殺しをやっている。しかも花火を、相手の口の中に入れてバン!と爆発させる。ええ..!? ですよ。山田五十鈴、高峰三枝子、京マチ子なんて大女優が殺しの元締めだったりするんです。70年代はお色気シーンも濃厚でした。殺し技をキレイな映像で見せるために、映画人が魂を注ぎ込んで作っていました。
3位、4位が「遠山の金さん」と「暴れん坊将軍」。時代劇ファンは2つの顔を持つ主人公が好きなんですね。身分のある人が町に出て行って、いざとなるとスパッと裁断する、スッキリ感ですね。暴れん坊将軍は成敗しちゃって、金さんはとりあえずお白州で調べますけど、「これにて一件落着!」で落着させちゃう。でも、遊び人の金さんと世間知らずの将軍様。どちらもとぼけたところがあって笑えるんです。シリアスな警察モノとは全然違います。