本命は脇本雄太に乗る村上博幸の番手差し
先行選手が番手にはまり、差し切り──展開のアヤによる勝ち方だが、番手を狙って取りに行ってもいいのではないか。
「佐世保記念」(12月13日【金】~16日【月】)に出走予定のS級S班は岡田征陽、佐藤友和、浅井康太。この3人のうち、トップ9の座を守ったのは浅井だけだった。
その浅井にしても今年前半は精彩を欠き、GI決勝戦に乗ったのは7月弥彦寛仁親王牌●⑧(●は決勝レースの着順)の1戦だけ。4度の記念Vがなければ、失速していておかしくなかった。1年間コンスタントに戦ってこそ超一流であることを忘れないでほしい。
そして、圧巻の強さを見せてくれた翌日には、あっさり敗退と両極端のレースをしばしば繰り返したのが佐藤友。競輪祭の2次予選逃げ切りと、準決勝のまくり届かずが、まさにそれ。
浅井と佐藤友は“どこからでも勝てる”自信があるからだろうが、そろそろ少しだけモデルチェンジをする時期に来ているのではないか。イン粘りしてでも好位を狙うこと。競りも覚悟しなければならず、落車の恐怖が付きまとうが、戦法の幅を広げれば戦いやすくなるはずだ。
一昨年のこの記念の覇者・地元の井上昌己にも同じことが言える。勝負どころで、なりふりかまわず戦う姿をファンは見たいのだ。
さて、並びと展開。地元勢は井上昌と山田英明が有力で、前後は調子しだいか。四国は渡部哲男─佐々木則幸、近畿は脇本雄太─村上博幸。浅井はこの3番手があるが単騎戦選択も。東日本は桐山敬太郎─内藤秀久の神奈川両者、矢口啓一郎─岡田─神山拓弥の関東トリオ、そして菊地圭尚─佐藤友─佐藤慎太郎の北日本ライン。他では競輪祭2着2回と健闘した飯野祐太と力をつけた井上嵩が圏内。
矢口が攻め込んでも、主導権は脇本が取り切る。桐山は前々につけ、地元勢と菊地も早めに動きそうだ。
本命は脇本に乗る村上博。番手からの差しが決まる。対抗の佐藤友がまくり気味に迫り、矢口しだいで岡田の浮上も。西日本勢には厳しい戦いになる。
伏兵は一ノ瀬匠(佐賀・92期)、泉利和(大阪・98期)、阿部力也(宮城・100期)の機動力型3選手。地元地区の一ノ瀬は逃げ切りに期待。泉は10月の一宮記念と熊本記念で準決勝進出、阿部は11月西武園F1①①●①(●は決勝レースの着順)でS級初優勝と勢いに乗っている。この2人、予選と負け戦で狙いたい。
◆プロフィール 山口健治(やまぐち・けんじ) 1957年1月、東京都荒川区生まれ。競輪学校38回生卒業チャンピオンとしてデビュー。主なタイトルは日本選手権、競輪祭(2度)。09年1月引退。現在「スポーツ報知」評論家。
◆アサヒ芸能12/10発売(12/19号)より