プロ野球界での「青天の霹靂」と言えば、巨人・原辰徳監督が2003年シーズンを限りに、そのオフに突然の辞任が発表され、新監督として就任した堀内恒夫氏が記者会見場で、緊張の面持ちで発した言葉を今でも思い出す。原監督は、監督1年目をみごと日本一で飾ったが、2年目はリーグ3位に終わり、その責任を負わされる形となった。堀内氏のみならず、原氏にとっても青天の霹靂だったに違いない。
YouTubeチャンネル〈野球いっかん!〉に、主に巨人で活躍した元プロ野球選手・川相昌弘氏が出演(11月18日付け投稿回)し、この原監督辞任の裏で繰り広げられていた、自身を巡る「もう一つのドラマ」を明かしている。
実は川相氏は、03年のシーズンを限りに現役を退き、原監督のもとでコーチを務めるはずだったのだが、肝心の原監督辞任で、状況が変わってきたという。そんな時、声を掛けたのが、かつてのチームメイトであり、中日の新監督に就任した落合博満氏だ。川相氏に電話で中日のテストを受けてくれるように言ってきたという。川相氏は当時をこう振り返っている。
「ジャイアンツを辞めて、もう1回現役をやるっていう覚悟を、たぶん落合さんは知りたかったし、見たかった。だからテストを受けてくれって言ったんですよ」
中日のテストを受けて移籍すれば、長年、巨人に籍を置いた川相氏でも、巨人に戻ることは2度と叶わないかもしれない。どうやら、落合監督は、その覚悟を見極めたかったようで、現地に移動し、まず1日練習して翌日監督室に赴くと、「決まり」と川相氏に即答したという。
そして、こう続けた。
「『練習見てどうのこうのじゃないんだよ。正直、飛行機に乗った時点で決まりなんだけどな』って言ったんですよ」
これには動画のスタッフが、思わず「たまんないですね。その男同士のシビれる会話…」と口にするほど心を揺さぶられていた。
03年のシーズンオフは、川相氏にとっても青天の霹靂だったわけだが、それを救った落合監督の男気あふれ、心温まるエピソードである。
(ユーチューブライター・所ひで)