松重豊が「孤独のグルメ」(テレビ東京系)をスタートさせたのは2012年のこと。中年男が1人で黙々と食べるだけのドラマが予想外にヒットし、シーズン9まで回を重ねた。あまりにおいしそうに食べる描写に「深夜の飯テロ」という言葉も生まれたほど。やがて、モノローグで視聴者の食欲をそそるドラマが続発した。武田梨奈の「ワカコ酒」(BSテレ東)が15年に、濱津隆之の「絶メシロード」(テレビ東京系)が20年にスタートし、それぞれ好評のうちに再登場が続いている。
そして、さらに進化した形を提示するのは、21年12月に始まった「#居酒屋新幹線」(MBS、TBS系)だ。主演は眞島秀和で、タイトルのままに「新幹線」が舞台である。眞島が演じる高宮進は、損保会社のサラリーマン。日帰りの地方出張が多く、帰りにはご当地グルメや地酒を調達し、車内で「居酒屋新幹線」が始まるというストーリーである。
「これまでのグルメドラマと違うのは、テークアウトしたものを1人で味わうというリアルな『ぼっちめし』でありながら、主人公がツイッターで実況中継をし、フォロワーたちとオンタイムでやり取りをするところですね。さらに、お取り寄せ可能な食品や地酒が多いだけに、すぐにその場でポチッとしてしまいそうな『飯テロ』を誘発します」(テレビ誌ライター)
ジェイアール東日本企画の全面協力で出張先が主に東北方面であるが、主演の眞島が山形出身であることが、物語にリアリティを与えている。残念ながら地上波の放送は全8話で間もなく終了するが、2月5日からはCSのチャンネル銀河で、未放送エピソードを含む12話の完全版がスタートする。主人公と同じく、ランチョンマットやコースターも用意して、旅気分を味わいながら観てもいいだろう。
(石田伸也)