●ゲスト:鉄拳(てっけん) 1972年生まれ。長野県出身。お笑い芸人、イラストレーター。97年より白塗りメイクと、スケッチブックを使った絵のネタで人気を集める。12年、自身が制作したパラパラ漫画「振り子」が国内のみならず海外の大反響を呼び、イギリスのバンド「MUSE」の公式プロモーションビデオに採用。13年、第42回日本漫画家協会賞特別賞を同作品で受賞した。現在もドラマやCMなどで作品を手がける。「おはスタ」(テレビ東京系、6:59~)水曜日にレギュラー出演中。
白塗りメイクと、イラスト芸で一躍お茶の間の人気者となった鉄拳。芸人戦国時代において、旬を過ぎたかのように扱われた時期の中、故郷へ帰ろうとした直前に思わぬ才能が見いだされる。「あまちゃん」でも大絶賛を得た、今や世界を代表する「パラパラ漫画作家」の隠された半生に、天才テリーも思わず驚嘆した!
テリー おでこに「アサ芸」、ありがとうございます(笑)。しかし鉄拳って、素顔がかなりの男前なんだよね。初めて見た時にビックリしたんだよ。
鉄拳 とんでもない。
テリー 男前を隠すためにそういうふうにしてるの?
鉄拳 いや、違います。お笑いをやってるのを、初めは親に内緒にしてたので。
テリー いつから芸人をやってるの?
鉄拳 もう16年ですね。
テリー 今、所属は吉本興業なんだよね。
鉄拳 はい。
テリー 鉄拳は今や、吉本で一番の文化人でしょう。パラパラ漫画アーティストとして。
鉄拳 いえいえ‥‥。
テリー 東京オリンピックの2020年の時に、きっと活躍するよ。開会式の映像の中に、鉄拳が作ったものがきっと出てくる。それぐらい、今のポジションって高いと思うんだよ。
鉄拳 そんな、マジですか。
テリー うん。だって、NHKの紅白歌合戦の「あまちゃん」コーナーのオープニングに、鉄拳の作品が中心となって映し出されたわけじゃない。すごいよね。
鉄拳 ありがとうございます。
テリー 25秒間の映像だったらしいけど、制作に2週間かかったとか。
鉄拳 はい。
テリー 全部で何枚であのアニメになるの?
鉄拳 紅白の時の作品は、200枚ぐらいですね。普通は1日で200枚描けるんです。だけど「あまちゃん」の作品に関しては、汽車の車両をリアルに、しっかりと描く必要があったので、時間がかかりました。手書きで適当に描くと、パラパラした時にグニャグニャした電車になるので、定規で線を引いて、とにかく丁寧に作りました。あとは夜のシーンだったので、空を黒く塗るのに時間がかかっちゃったんです。それで制作日数が2週間ですね。
テリー 昔、芸人になる前に描いた漫画で、ちばてつや賞を獲ってるんだとか。
鉄拳 はい。でも、いちばん最初に送った作品で賞がすぐに獲れたので、「漫画家って簡単だな~」と思ったんですよ。
テリー 賞のあとはどうなったの?
鉄拳 そのあとに描いた作品はまったくダメで、すぐに諦めましたね。「漫画家って難しいな」と思って。
テリー それからプロレスラーを目指したって聞いたけど‥‥。
鉄拳 プロテストを受けて、いちおう合格したんです。いざみんなと練習しようと思ったら、ワンツーの練習をずっとやらされて。プロレスラーの合格じゃなくて、どうやらレフリーの合格だったと。「レフリーだったら僕はやりたくない」と言って、そこも辞めました。
テリー そりゃそうだよなぁ(笑)。それから?
鉄拳 何としても「何かやりたい、有名になりたい」という思いがあって、情報誌で「合格すればすぐCMや舞台に出られる!」というのを見つけて、劇団東俳に入ったんです。ところが稽古をしていたら、みんながクスクス笑うんですよ。
テリー 何で?
鉄拳 僕、滑舌が悪かったんですね。自分では饒舌だと思っていたんです。先生に聞いたら「確かに滑舌が悪い」と言われて、みんなが笑うんで、頭にきて辞めました。
テリー 俺も自分の滑舌が悪いって、ラジオをやってみて初めて知らされたタイプだから、わかるなぁ。それでどうしたの。
鉄拳 当時は「ボキャブラ天国」(フジテレビ系)がブームで、お笑い芸人はみんなすぐテレビに出られる雰囲気だったので、じゃあ、僕もお笑いをやろうと。何をやろうかって考えた時に、絵が得意だったので、絵を描こうと。
テリー ちばてつや賞だもんね。
鉄拳 もともとプロレスラー志望だったので、格好はプロレスラーっぽくして、この姿で滑舌が悪いしゃべりをしたらおもしろいかなと思って、スケッチブックを持って、お笑いライブに出たんです。そしたらすぐ優勝するようになって。
テリー すごい。
鉄拳 4連続で優勝して、そこに来ていた番組スタッフさんから誘われて出たのが「爆笑オンエアバトル」(NHK)だったんです。そこからトントン拍子で、本を出版しませんかと言われて、出したらベストセラーになって。それをきっかけに結婚しました。