武はパドックについてこう語った。
「パドックはそれでも、見るところはあります。バンテージを巻いているとか。つけている馬具は見ていますね。ブリンカーをつけて内枠だと大丈夫かな、とか」
あくまでケガなど、最初から除外に値する項目を見極めるための参考にする程度だというのだ。
それだけではない。馬券の買い方にも確固たるポリシーがあった。実はプライベートでも、武の自宅に程近い競輪場で、たびたび車券を購入。勝負勘を養っていたというのである。競輪担当記者が解説する。
「武騎手の競輪好きは有名で、地元関西の競輪場でもちょくちょくお見かけしますよ。現在は閉鎖されましたが『大津びわこ競輪場』には、たびたび遊びに来ていましたね。中でも毎年6月の『高松宮記念杯』には奥さんの佐野量子さん(45)と一緒に来るのが恒例。時には奥さん1人で車券を購入していることもありました。車券の買い方は、2車単、3連単ともに軸を決めて流すスタイル。馬券も同様で、連単と3連単フォーメーションが基本。1着馬を固定するパターンで購入していましたね」
武のギャンブラーぶりは関係者の間でも有名で、「過去には競輪3連単で8万車券を的中させたこともあった」(前出・競輪担当記者)というから、その実力は折り紙付き。番組内でもその勝負勘は遺憾なく発揮された。
小手調べの1レース目は外したものの、2レース目では入念に馬柱を読み込み、選出した軸馬は一番人気。
「これだけ◎印が付いてるから強いんじゃないですかね」
と武は冷静に分析。それから、みずからに言い聞かせるように言葉を選ぶ。
「まず、当てなきゃダメですからね。武豊が一回も当たらんかったって(笑)。堅めに当てにいきますよ」
騎乗の時に見せるポーカーフェイスとは打って変わって、リラックスした表情を浮かべつつ、その視線は真剣勝負そのもの。結局、馬券は、1着予想馬を1頭にしぼり3連単で勝負。2、3着を4頭にしぼり込み、計12通り×一口3000円の馬券で臨んだ。
レースは軸馬がスタートで出遅れたものの、向こう正面からまくって1着馬が的中。続いて2、3着には武が予想した中穴馬が飛び込んだことで配当もグンとアップ。みごと1万2230円の万馬券ゲットに成功したのだ。