スポーツ

掛布雅之 気がかりなのは投手陣の層の薄さ

 層の薄さが指摘されているのが投手陣です。皆さんもご存じのとおり、阪神は昨年、久保康友、スタンリッジを放出。久保は抑え投手として投げていたとしても、もともと先発タイプ。彼らは1人10勝の計算ができる実力の持ち主だけあって、2人の離脱は単純計算で20勝のマイナスとなります。この穴埋めは、そう簡単ではない。

 今、先発ローテとしてあげられるのはエースの能見篤史、昨シーズン12勝のメッセンジャーに、ルーキーながら活躍した藤浪晋太郎の3人だけ。これでは1週間のローテを回すのは実質的に難しい。6番手までとは言いませんが、ペナントレースを迎えるためには、せめて4、5番手の投手の確保はしておきたいところなのです。

 その点、秋山拓巳や歳内宏明は若手で勢いはあれど、まだローテを任せられるほどの経験もなく、体力面での心配がある。彼らをいきなり先発の柱にするのは、ギャンブルに過ぎる部分があります。

 そこであげられるのが、やはり実戦の経験がある榎田大樹に岩田稔の左2枚。彼ら2人が投げる形が、チーム戦力を考えたうえでも当然の流れです。今季の阪神の成績は、この4、5番手の左2枚が先発登板の試合でいかにふんばれるかによって、ガラリと変わってくるでしょう。

 そういう意味では、今年の春季キャンプは捕手を含めた野手の選手層の厚みと投手陣の選手層の薄さがはっきり表れたキャンプと言えます。

 最後に、キャンプ終盤に驚かされた選手をもう1人取り上げたいと思います。

 沖縄遠征から安芸に帰って、風邪で離脱していたドラフト2位ルーキー、横田慎太郎のフォームをチェックしました。そこでまず感じたのは、彼の身体能力の高さです。ハイジャンプはなんと82センチ。身長186センチという大きな体を十分に生かせる強靱なバネがあり、また、足の速さも持ち合わせています。

 バッティング面ではスイングの際に右の手のひらが返ってしまうなど修正すべき個所はまだまだ多いのですが、特筆すべきはその指摘をその場ですぐに直してしまう彼の対応力。少し説明をするだけで、すぐに飲み込んで実践できてしまうのは彼自身の素直な性格も手伝ってのことでしょう。また、本人も「グリップの位置が気になるんです」と話しかけてくるなど、積極的な姿勢も非常に喜ばしいことです。

 技術的には、まだ今すぐに試合で使える選手ではないですが、3年ほどのスパンを見てケガなく育てて、ゆくゆくはレギュラー争いができるほどに成長してほしいと思っています。

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