いわゆる「価値観外交」が、現在の安倍政権での外交政策の軸となっている。共通の普遍的価値を持つ国と、インフラ整備などを通じて関係を深めていこうという政策である。
日本では06年、第1次安倍政権時に外務大臣だった麻生太郎財務大臣(73)が提唱。当時、安倍政権の外交政策の基本となっていた。渡邉氏が解説する。
「外交方針は明らかに変わっています。06年時には、韓国は価値観外交の中の重要な地位を占めていたのです。しかし、今回の価値観外交では、韓国は最初から入っていません。日本に対してネガティブキャンペーンをやる国に対して、日本がなぜ支援をしなければならないのか、ということです」
「普遍的な価値」とは、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済などを指している。安倍政権では韓国を、こうした当たり前の価値さえ共有できない「ならず者」と位置づけているのだ。
経済援助を含めた外交だけではない。これまで北朝鮮が攻め込んでくる半島有事が起きれば、日本は在日米軍を支援する形で韓国を手助けすることが「当たり前」とされてきた。しかし、昨年開かれた日韓両政府の非公式協議で“事件”が起きていたのだ。
北朝鮮情勢や集団的自衛権の行使容認について意見交換をする会議で、日本政府側の出席者の一人が韓国側にこう告げたのである。
「朝鮮半島で再び戦火が起きて、北朝鮮が韓国に侵攻しても日本は韓国を助けないかもしれない」
当初、言われていることの意味が理解できず、あきれたように日本側を見ていた韓国政府関係者たち。さらに、その出席者はゆっくりと続けた。
「日本は米軍との事前協議において、米軍が日本国内の基地を使うことを認めないこともありうるかもしれないということだ」
ようやく、意味を飲み込んだ韓国側の顔は、いつもの反日活動中の赤い色からみるみる青ざめていったという。
軍事ジャーナリストの井上和彦氏が解説する。
「有事が起こった際には、日本の在日米軍が韓国の応援に駆けつけるというシナリオがあるんですよ。韓国にとって、安全保障を担保しているのは岩国の米海兵隊航空部隊と、普天間基地なのです」
このシナリオにおいて、米国と日本政府は、日本国内の基地使用に関する事前協議を必要とする。ここで日本側が「ノー」を突きつければ、米軍は韓国を助けるために行動できないことになる。渡邉氏が語る。
「現状の日本の世論状況を考えて、半島に有事が起こったとします。その時、『韓国に対して救済しろ』という国民世論の後支えがなければ、政府としては何も動けません」
韓国は、歴史認識問題だけではなく、サッカーなど文化面でも、さまざまな嫌がらせを日本にしてきた。これによって練り上げられた日本の世論が、韓国を「見殺し」にすることを容認し始めているのである。