「僕らの中では、マークは石毛だ!」
阪神タイガースが21年ぶり7度目のリーグ優勝を決め、2リーグ制になってから初の日本一に輝いた85年の日本シリーズ。対する相手は西武ライオンズだった。
「阪神-西武戦」において、阪神ナインが最も警戒していたのは西武のチームリーダー・石毛宏典氏だったと回想したのは、「ミスタータイガース」の掛布雅之氏。8月12日に石毛氏とともに出演したYouTubeチャンネル〈プロ野球OBクラブチャンネル〉でのことだった。
85年の石毛氏は、プロ入り後初めて全試合(当時は130試合)に出場、27本塁打、76打点の活躍を見せ、二塁打「27」はリーグトップだった。
日本シリーズでもその勢いはとどまるところを知らず、第2戦でソロホームランを放つと、続く第3戦でも2ランホームラン。
しかし、2勝2敗のタイスコアとした第5戦で、石毛氏は6回裏の守備でショート後方の打球を追いかけ、左翼手と激しく交錯し、右ひざを痛めてしまう。
「ひざがプラプラしてましたね」
そう回想する石毛氏。ところが、当時の広岡達朗監督はこう言い放ったという。
「出られるのか出られないのかどっちなんだ!」
とっさに言い返す石毛氏。
「出られます」
すると広岡監督は、
「トレーナー、テーピングしとけ! 出ろ、お前!」
強引な出場命令が下されたのである。
結果的に石毛氏は第6戦で今シリーズ3本目となるホームランを放つなど大活躍で、西武の中で唯一の敢闘賞を受賞したのだった。
(所ひで/ユーチューブライター)