このところ、自民党の二階俊博元幹事長の鼻息が荒いという。自民党幹部がこう打ち明ける。
「安倍氏の国葬などで岸田政権の支持率が30%前後にまで落ち始め、官邸周辺からは『国葬うらめしや』の声さえ聞こえ、弱気の虫が蠢いている。そんな中、二階氏はCS番組で国葬について、『みんな黙って手を合わせて見送ってあげたらいい』などと発言。これがネットなどでは猛バッシングを受けていますが、本人はどこ吹く風ですよ」
二階氏の強気な姿勢はこれだけではない。8月には講演で旧統一教会と自民党との関係について「電報を打ってくれと言われりゃ打つんですよ」「『応援する』と言われたら『よろしくお願いします』は合言葉。モノを買いに来てくれたら『毎度ありがとうございます』と商売人が言うのと同じ」として、こうも言い放った。「自民党はビクともしないよ」。
こうした発言もしかりだが、ごく最近、二階氏の存在感をさらに強めたのは、自らの足元、和歌山県の知事選での対応だという。和歌山県議が明かす。
「和歌山県では現職の仁坂吉伸知事が6月、12月の任期満了に伴う次期知事選(11月)に5選出馬しないことを表明。そこで二階氏は、無所属で立候補する国民民主党出身の岸本周平前衆院議員の支援を決めた。ところがそこに、自民党の世耕弘成参院幹事長が『党独自候補を出すべき』と、和歌山出身の総務官僚である小谷和也氏を擁立する方向で動き始めたんです。これに激怒した二階氏は素早く反応し、県町村会や農協、建設業界をすべて『岸本推薦』で固め、外堀を完全に埋めてしまったんです」
一時は二階氏と世耕氏の代理戦争の様相を呈したが、このために世耕氏は動きを封じられ、結局は9月13日の会見で小谷氏の推薦を撤回している。
「世耕氏とすれば、高齢で幹事長も辞任した二階氏には、次の知事選で完全に引導を渡したい思いで小谷氏の擁立を練ったのでしょう。というのも、次の衆院選で和歌山県では小選挙区数が3から2へ減。そこで世耕氏は参院から衆院に鞍替えして二階氏の選挙区から出馬するチャンスを伺っているともっぱら。その弾みとするため、知事選で息のかかった小谷知事を誕生させたかったわけですが、二階氏の電光石火の対抗策により屈服させられた格好です」(政治部記者)
二階氏側近が言う。
「二階氏は中国の習近平国家主席が異例の3期目に挑むのを横目で見ながら、『俺も頑張らねば』と漏らしていると聞く。なにしろ習氏と直で電話ができる日本で唯一の政治家で、本人もそうした自負がありますからね。自分が信じきれる後継者が決まらなければ、次の総選挙も出馬しますよ」
世耕氏としても後ろ盾の安倍元首相がいなくなったのは痛いところだが、妖怪・二階俊博の底力はまだまだ健在のようだ。
(田村建光)