耳に残るけれど、懐かしい感じもする。今年ブレイクした日本ハムの「きつねダンス」はなぜ聴く人たちの耳に刺さるのか。原曲「The Fox」を歌うノルウェーのコメディーデュオ「Ylvis(イルヴィス)」が地上波初出演した9月20日放送のNHK「うたコン」で、石井竜也が鋭いひと言を放ったのだ。
ファイターズガールとともに出演した「Ylvis」の兄ヴェガード、弟ボードは、本邦初公開となる生歌を披露。その横でMCの谷原章介、赤木野々花アナ、横山剣らときつねダンスを踊った後、石井が「途中、デュラン・デュランっぽいところもあって、最高だよね」と、さすがは同年代に活躍していたミュージシャンらしく、絶妙な評論を展開した。
この言葉に「それだ!」と膝を叩いた視聴者は多かったことだろう。つい体を動かしたくなるメロディー。「きつねダンス」は80年代に活躍したイギリスのロックバンド、デュラン・デュランの大ヒット曲「The Reflex」をオマージュしたメロディーラインと編曲なのだ。
「The Reflex」を手掛けたのは、マドンナのアルバム「ライク・ア・ヴァージン」、デヴィッド・ボウイのアルバム「レッツ・ダンス」を世界的に大ヒットさせた大物音楽プロデューサー、ナイル・ロジャース。当時、彼がプロデュースした曲を、街中やディスコで聴かない日はなかった。ポップス界のレジェンドの楽曲が40年ぶりに蘇ったのだから「刺さる」のは必然だ。
80年代の洋楽ポップスを聴いていた50代以上には懐かしく、当時を知らない40代以下には斬新に聴こえる。球場を訪れた全ての世代が「きつねダンス」を踊り出さずはいられない。
世界的に暗いニュースが駆け巡った寅年の最後はNHK紅白歌合戦で「虎の威を借るキツネ」が踊る──。どうやら確定のようだ。