昨今、新たな「勃起薬」として「ザルティア」が注目されている。現在、日本でED治療薬として認可されているのは、バイアグラとレビトア、シアリスの3種類だけ。いずれも、血流をよくすることで、海綿体を充血させる効果を持っている。それぞれ、効き目が現れるまでの時間や、持続時間に異なる特徴があるのだが、いずれも自由診療の保険適用外の医薬品である。なのに、ザルティアは健康保険が適用されるという。
ED専門医師が、こう解説する。
「『ザルティア』というのは商品名で、タダラフィルという薬になります。このタダラフィルがED治療薬として用いられると、商品名が『シアリス』となり、肺動脈性肺高血圧症治療に用いられると、商品名『アドシルカ』となるのです。粒の大きさが違うだけで、同じメーカーが販売する同じ薬となります。なぜ、『ザルティア』に保険が適用されるかといえば、前立腺肥大症の治療薬だからです」
4月17日に、正式に保険適用での処方が開始されたザルティアだが、厚労省が定めた薬価が5mg錠1粒で約230円。一般的に健康保険では自己負担は3割だから、1錠約70円になる。保険適用外のシアリス20mg錠が1粒1500円前後。ザルティア5mg錠を4粒(約280円)服用すれば、シアリス1錠分に該当する。金額的にはシアリスで週イチだったオヤジは、ザルティアなら週6回は可能になる。いや、シアリスの効果持続時間が36時間であるから、ザルティア1500円分は1週間で服用しきれないことになる。
しかし、都内で開業する泌尿器科医がこう話す。
「患者さんがED治療のためにザルティアを求められるようでしたら、違法行為になるのでお断りします。厚労省からも、ザルティア処方にあたっては、厳密な前立腺肥大症の診断をするよう指導が来ています。少なくとも、尿流測定、残尿検査、前立腺超音波検査は受けてもらい、仮に前立腺肥大症と診断しても、まずはザルティアとは別のα遮断薬での治療を勧めます」
ちなみに前立腺超音波検査では、お尻に異物を挿入されてしまうとか。その屈辱に耐え、バカにならない検査費用を払い、医師まで丸め込まなければ、ザルティアを勃起薬として服用することはできそうにない。奇跡的にハードルをクリアできたとしても‥‥。
「シアリスは、ごくまれに剥脱性皮膚炎などの重大な副作用も報告されています。ザルティアをED治療目的で服用して、重大な副作用が出ても、医師の処方を守らなかったということで、その治療費の公的助成が受けられなくなります」(ED専門医師)
勃起のための金をケチって、健康を害しては意味がない。おとなしくバイアグラジェネリックを心待ちにしようではないか。