40代以上の男性の6割が、高血圧と言われる中、「深呼吸」など簡単な方法で、みるみる血圧を下げることができるというマニュアル本が話題となっている。高血圧のスペシャリストが教える“血圧を下げる秘策”とは──。
「数字ばかりが独り歩きし、『降圧剤、やめてもいいですか』なんて言う患者さんがいましたが、もう1度、高血圧に対するいい注意喚起になったと思います」
と語るのは、「ズボラでも血圧がみるみる下がる49の方法」(アスコム)の著者で、東京女子医科大学東医療センターの内科医・渡辺尚彦氏だ。
今年4月、日本高血圧学会では、正常血圧の範囲を、上(収縮期)が139mmHg(以下省略)、下(拡張期)は89mmHgまでと発表したが、同じ4月に、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会でも、正常値を147mmHg、下は94mmHgとする新基準を発表し、大混乱を招いた。とはいえ、この新基準でもいまだに多くの患者および患者予備軍がいることに変わりはない。渡辺氏が続ける。
「高血圧は生活習慣病の中でも最も多い疾患で、50代の2人に1人以上と推定されます。別名『サイレントキラー』、つまり『静かなる殺し屋』と称されるように、気づかないうちに病状が悪化していきます」
徐々に血管をむしばむ生活習慣病の高血圧は、心筋梗塞や脳梗塞など死因の上位を占める重大病につながるだけに、成人男性なら誰しも注意したいもの。今回の「新基準」騒動のように、いたずらに血圧の数値に振り回される必要はないという。
「1度の測定に一喜一憂するのではなく、高い状態が続かないようにすることが大切です。例えば、究極の降圧法は、ズバリ深呼吸で、30~40mmHgも下がります。鼻から肺いっぱいに吸い込み、4倍ほどの時間をかけてゆっくりと吐き出すだけです」(渡辺氏)
日常生活を少し見直すだけで、降圧剤は遠ざけられる。中でも減塩を意識すれば、その効果は絶大だ。
「現在、日本人の1日当たりの平均食塩摂取量は男性で約11グラム。高血圧の治療ガイドラインでは6グラム未満を推奨してます。いきなり半分は難しいでしょうが、『ラーメンのスープを半分残す』だけで約3グラムも減塩できます。そばやうどんも同じで、つゆを残すところから始めたい」(渡辺氏)
高血圧対策の定番である運動にしても、ちょっとしたくふうが降圧につながる。
「運動嫌いの人なら、『階段は上らなくて下るだけでいい』。運動効果は同じです。また、『足首の曲げ伸ばし』や『足首を回す』動作で、ふくらはぎの血行をよくすることで、予防効果は期待できます」(渡辺氏)
心臓が血液を全身に送るポンプならば、「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎは、下半身の血液を心臓に戻すポンプ。叩いたり、もんだりして刺激を与えることで血液循環はよくなり、血圧は下がっていく。渡辺氏が言う。
「意外という点では、首にタオルを巻くだけでも、血圧は下がります。首には体温調整のスイッチとも呼べる『AVA』(動静脈吻合)という特殊な血管があります。首を温めていれば、体温を下げないように機能してくれる。皮膚が冷たいと感じるだけで、血圧は上昇するので、冷房の効いた室内でも効果があります」
体温の急激な変化は、血圧の敵。お風呂の3大リスクは「高温、長湯、温度差」だが、トイレも要注意だ。
「便座カバーをした洋式トイレでの『座り小便で血圧は下がります』。立ち小便だと、しっかりと飛ばそうと腹圧がかかり、それだけで血圧上昇。医学的に見ても、膀胱や前立腺に優しい座り小便を勧めます」(渡辺氏)
ここまで簡単なら明日から試すこともできそうだ。