安倍晋三元首相の死去後、97人を擁する自民党最大派閥・安倍派(清和政策研究会)の新会長が、いまだ決まらず右往左往している。そのため最近では安倍派が分裂し、やがては菅義偉前首相が安倍派を飲み込むのではとも囁かれている。
安倍派の最新情勢を安倍派中堅議員が解説する。
「安倍氏の国葬、山口県民葬が終わった後は、塩谷立会長代理が新会長に就任する流れだった。ところが、土壇場でこれに猛反発したのが、衆院4期生や清和会の参院議員集団『清風会』議員らだ。彼らは世耕弘成参院幹事長の息のかかった議員たちで、『安倍派は世耕派となるべきだ』などと大騒ぎした。そのため塩谷派は見送られ、当面、集団指導体制を維持する格好となっている」
そして、こう嘆くのだ。
「こんなこといつまでしていたら、安倍派は空中分解ですよ」
そんな折に飛び込んできたのが、菅氏に関するニュースだった。在京テレビ局政治担当記者が説明する。
「菅さんが、日本とインドの交流促進に取り組む日印協会会長に近く就任するというのです。この前会長は安倍さんでした。インドは日本、米国、オーストラリアを含めた4カ国の協力枠組み『クアッド』のメンバー。生前の安倍さんは自由で開かれたインド太平洋の実現を目指し、インドとの関係を重視していました。実際、米中ロの対立が激しくなる中、世界の中でインドの役割が高まっています。そうした重要なタイミングでの日印協会会長就任で、菅氏の存在感が一気に増しているんです」
菅氏シンパの自民党衆院議員の一人もこう指摘する。
「岸田さんの支持率が急落する一方で、菅さんが底力を見せつけ始めている。安倍さんの国葬の涙の弔辞も国内外で反響を呼び、安倍派内では慕う声が飛び交っていますよ」
そんな中、安倍派議員の中からは、こんな声まで出ているというのだ。
「菅さんは首相時代も、安倍さんの路線を継続させ1ミリたりともブレなかった。安倍派の継承は彼に任せるのが一番。菅さんに派閥を立ち上げてもらい、そこに合流したいという安倍派議員が確実に増えています」
菅派の立ち上げとなれば、首相再登板の現実味も帯びてくる。
(田村建光)