大減俸を飲んだ田中将大はどうやら、今季を楽天ラストイヤーと目論んでいるようだ。
田中は昨季の球界最高年俸9億円から約半減となる、4億7500円プラス出来高払いの単年契約で更改した。16年、巨人・杉内俊哉の5億円ダウンに次ぐ。史上2番目の大減俸。本人は「また契約していただけて、大変ありがたい気持ち」と感謝の言葉を口にしたが、腹の底は違う。
長年にわたり、田中を取材してきたスポーツ紙記者が解説する。
「メジャーリーグで実績を残したマー君にとって、球界最高年俸はある種のステータス。ここ2年間で13勝しか挙げておらず酷評されているが、MLBなら勝ち星は、そこまで評価の対象ではない。2年連続で規定投球回を大きく上回り、試合を作ってきた自負もある。金額はともかく、大幅ダウンという評価は納得がいっていないはず」
昨季途中に海外FA権を取得した田中の第1希望は、MLB復帰だ。年末にニューヨークで、メッツに入団した千賀滉大と会食したことを明かしているが、渡米の理由はMLB復帰に向けての情報収集という目的もあっただろう。
田中が日本復帰を決めた最大の理由は、米国内の新型コロナウイルス感染症の拡大を考慮し、家族の安全面を優先したため。だが、現在の米国内の状況をみれば、懸念は解消されたと実感したに違いない。
現在もMLB内では、田中の評価は決して低くない。今季、楽天から支払われる程度の年俸なら3、4番手の先発投手として複数年契約を検討する球団もある。あと2年間プレーすればMLB在籍10年となり、満額で21万ドル(約2900万円)が支払われる年金受給者の対象となる。日本人で満額をもらえるのは、イチロー氏や松井秀喜氏ら、わずかしかおらず、この点にもかねてよりこだわりが強いのだ。
現在、日米190勝で、名球会入りまであと10勝。楽天としては優勝争いもさることながら、それを商売に結びつけたい思惑もあり、田中も飲んだ形となった。今季、2ケタ勝利を挙げて再び日本を去るのが理想のようだが、そううまくいくかどうか。ふがいない成績でMLB復帰が消滅し、2年連続の大減俸で楽天残留とならなければいいのだが。
(阿部勝彦)