前回(2月6日公開記事)反響を呼んだ「銃を突き付けられた芸人」の体験談はまだある。
これもまた、大阪の話だ。
チャンス大城は20代前半の頃、日本で最も多く日雇い労働者が集まる西成の映画館でアルバイトをしていた。街は治安が悪いため、社長から防刃チョッキを着るように言われ、スタンガンや警棒を持ち働いていたという。
映画を全く見ず、さきイカをつまみにワンカップを呷って「俺はお前(大城)と話ししているのが好きなんや」とおしゃべりをして帰っていく、ヤクザ風のオッサン客がいた。ベルサーチのスーツに身を包み、剃り込みの入った、眉毛のない、首元から刺青を見せている男だ。
ある日、そのオッサンが大城の前に、ピンクのハイヒールを履いて現れた。ボケかなと思いきや「俺、こっち系やねん。今までお前のことをずっと口説いてたの、わからんかったか」と迫ってきたのだ。「明日、通天閣の下に12時に来て」と誘われたが、大城は無視した。
次の日、オッサンが映画館に「オイ、コラッ!お前、なんでデート来んかったんじゃ!」と怒鳴り込んできた。
怒りをぶつけられ、大城は「すみません」と謝り、彼を外まで見送った。
その時、オッサンが乗ってきた原付のシート下から、脅かすようにピストルを見せつけられた。大城は、
「僕は本物を見たことないけど、まあ本物やろうなっていうか、素人でもわかるような感じで」
と、腰を抜かしたという。
銃を突き付けられたまま、公園の和式便所に連れていかれた。
「服を脱がされ、僕の股をペロペロって舐めてきて『お前、なんで勃たへんねん』って」
おぞましい体験を振り返りながら、こう憤った。
「オッサンに拳銃突きつけられて、勃つ要素なんか、全くないでしょ!」
カマを掘られるのかと怯えていたが、なんとオッサンは拳銃を突きつけながら大城にヒップを突き出し、挿入を懇願してきたのだという。
「そのキャラクターでネコかい、って思って」
大城は必死の抵抗を試みる。
「もう死ぬか生きるかしかないんで、持っていたスタンガンで、オッサンの太腿にバリバリバリバリッって。(オッサンは)痺れながら倒れていったんですよ」
無事に難を逃れたのであった。
その後、復讐はされなかったが、一度だけ街で会ったという。
「『お、おぉー』って言われましたよ。パチンコ屋から出てきて、たぶんちょっと勝ってたんでしょうね。あれ負けてたら、シバかれてたかと思って…」
力なくそう振り返るのだった。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。