今季、1軍チーフ投手コーチから配置転換された桑田真澄ファーム総監督が、完全に「窓際族」になっている。
長年、巨人を取材してきたベテランのプロ野球担当記者は、桑田ファーム総監督の現状をこう説明する。
「2軍にも3軍にも監督がいる巨人にとって、ファーム総監督という役職は名前だけのもの。通常、巨人のコーチ契約は単年ではなく、複数年です。チームとしては、投手チーフコーチとしての契約年数が残っていたため、『解任』するにしても、なんらかのポジションを与えなくてはならない。そのために作った閑職ですね」
名目上は2、3軍の首脳陣、選手、スタッフを統括する立場。ファーム組織を運営する責任者だが、巨人は原辰徳監督がチーム内を統括する全権監督の立場にあり、ファームとはいえ、桑田ファーム総監督は口を挟める立場にはない。
事実、春季キャンプでは2月1日から4日までは3軍のキャンプ地、宮崎県都城に滞在して施設面などをチェック。5日には2軍のキャンプ地に移動し、ドラフト1位・浅野翔吾らと面談するというスケジュールをこなしただけだった。今後は25歳以下のファーム全選手と面談を行い、若手が抱える様々な悩みに向き合うことが主な仕事だ。巨人のエースとして活躍し、ピッチング理論に関しては絶対の自信を持つ桑田ファーム総監督にとっては、やりきれない思いだろう。
窓際に追いやられたのは昨季、投手起用を巡って原監督と対立したことが背景にある。
「現役時代に右ヒジの故障で苦しんだ桑田ファーム総監督だけに、投手に過度な負担を強いる原監督の起用法には何度も異を唱えてきた。このおかげで守られた投手も多いのですが、メンツを潰された形の原監督が黙っているわけがない。配置転換は意趣返しでしょうね」(スポーツ紙デスク)
原監督の強権人事発動は、これが初めてではない。現在、DeNAのユニフォームを着ている石井琢朗野手総合コーチも、巨人の野手総合コーチ時代の19年、シーズン途中で3軍総合コーチに降格。シーズン後、自ら退団を申し出ている。石井コーチの意見具申が原監督の逆鱗に触れたのが原因といわれている。
上司に嫌われて窓際に追いやられたサラリーマンのような桑田ファーム総監督は、このまま黙っているのだろうか。
(阿部勝彦)