キックボクシングで無敗を誇った那須川天心(帝拳)がボクシングに転向し、いよいよ4月8日に東京・有明コロシアムで、スーパーバンタム級6回戦でデビューする。
注目の対戦相手に決まったのは、日本バンタム級4位の与那覇勇気(真正)。沖縄県那覇市で生まれ育ち、小学・中学時代は空手と柔道、そして沖縄尚学高校でボクシングを始め、08年度選抜大会バンタム級で優勝している。
その後は東洋大学に進むと、国体3位の実績を残して神戸の真正ジムに所属し、13年にプロデビュー。16年にボクシングを引退し、ジムのトレーナーになった。女子ボクシングの佐伯霞を世界チャンピオンに育てた実績があり、選手たちを教えているうちに「自分もまだやれるのでは」と思い直し、4年前に現役復帰した、異色のボクサーである。
「与那覇の戦歴は12勝(8KO)4敗1分けで、日本ランクは4位。数字上はそれほど目立つワケではありませんが、那須川は難敵を選んだな、という印象です。相手が弱すぎるとファンはシラケてしまうでしょうから、そんな相手は選べない。かといって、初戦で負けてしまうのも困る。そこで4位の与那覇に白羽の矢が立ったのでしょうが、これはもしかすると、もしかすると思います。俄然、注目の試合になりました」(全国紙運動部記者)
ボクシング界の内情を知るジム関係者が、踏み込んで言う。
「那須川が所属する帝拳ジムの本田明彦会長と与那覇の真正ジムの山下正人会長は、師弟のような親しい関係なんです。本田会長から与那覇でいくと言われたのか、山下会長から与那覇はどうですかと提案したのかは分かりませんが、4月8日の興行プロモーターが山下会長(寺地拳四郎の世界ライトフライ級王者三団体王座統一戦がメインイベント)ですから、本田会長も応援してやろうということなんじゃないですか」
それにしても、与那覇にとっては千載一遇のビッグチャンスが舞い込んだことになる。このチャンスを生かすかどうかに人生がかかっている、と言っても過言ではないだろう。
「与那覇は一度引退してトレーナーになったのが、プラスに作用しています。試合を客観的に見られるようになり、幅が広がった。現役復帰後は負けていませんし」(前出・ジム関係者)
与那覇のトレーナー時代に師事して世界チャンピオン(WBO女子世界ミニマム級)に輝き、現在は育児のために王座を返還している佐伯は、
「教え方が分かりやすくて優しいし、本当に助かりました。ボクシングは頭を使うスポーツですから、那須川戦でも上手く戦うと思います。ぜひとも勝ってほしいです」
当の与那覇も、試合を待ち望んでいる。
「神童と呼ばれている相手ですからねぇ。でもボクには失うものもないから、これで全国に名前が売れるよう、チャンスをものにするために頑張ります。応援して下さい」
難敵を選んでしまった那須川がどのような戦いをするか、今から楽しみなのである。