回転寿司チェーン大手・スシローにおける迷惑動画事件が、意外なところに影響を与えている。
実は今、就職活動を控える学生の間で、自身のSNSアカウントを削除する動きが広がっているのだ。志望する企業が自分のSNSをチェックするのでは、と恐れて削除してしまうらしい。
ただ、こうした就活学生が抱える問題は2000年代初期からあった。いわれなきネットへの書き込みによって志望企業から不採用とされた事例を紹介しよう。
2004年秋、都内の某有名私立大学3年生のAさん(男性)は就職難に陥っていた。その理由は、同年6月に発覚した、大学のイベントサークルが起こした大規模な暴行事件、いわゆる「スーパーフリー事件」だった。
Aさんはこの事件で逮捕された学生と同じ大学に通っていた。当時、大学にはクラブなどでイベントを行うことを活動としたイベントサークルが多数存在し、Aさんもその一員だったという。
「私が所属していたサークルは飲み会やクラブに女の子を呼んでイベントを行うまっとうなサークルでした。飲み会でいい感じになった女の子と遊びに行くことはありましたが、暴行なんてしたことはありません。しかし当時、匿名の電子掲示板に《遊んでいるサークル》として書き込まれてしまいました。だからかどうか、希望していた就職先を軒並み不採用にされたのです」
イベントサークル=犯罪者集団というイメージがついてしまったことで、まったく無関係のAさんにまで影響が及んでしまったようだ。スーフリ事件の余波は翌年まで続き、Aさんは卒業時期になるまで内定をもらえなかった。結局、卒業後、1年間はフリーターとして過ごし、ほとぼりが覚めたころに就職が決まったという。
都内の某有名私立大学3年生だったBさん(男性)も、就職活動中にネットに書き込まれた1人である。
「学生のときに水商売に女の子を紹介するスカウトマンのアルバイトをやっていました。当時は路上でスカウト行為をすることができたので、成績もそこそこだったのですが、ライバル会社のスカウトからやっかみを受けて、匿名掲示板に事実無根の内容を書き込まれたんです。《Bは女の子を無理やりピンク店に沈めている》《女の子を食い物にしている》などです。それが就活のときに企業の目に止まり、就活は全滅。親には『せっかく大学にいれてやったのに』と勘当宣言され、友達からも白い目で見られました」
Bさんはその後、日本での就職を諦め、単身海外に渡って起業している。
こうした「ネットによる被害」を恐れるあまり、冒頭のようにSNSを削除してしまう学生があとを絶たないのだという。
もっとも、AさんやBさんのように、悪意を持った第三者に誹謗中傷されてしまった場合、仮に自分のSNSアカウントを削除していたとしても徒労に終ってしまうが…。
ネット上に巣食う問題は根が深いのである。