岸田文雄首相の今後の政権運営にとって重要な衆参五補欠選挙が、4月23日に投開票される。ここにきて「自民党安泰」とみられてきた衆院山口の2つの選挙のうち、山口2区が危ういとの情報が出てきて、官邸を慌てさせているのだ。
自民党が行った調査では、岸信夫元防衛相の長男・岸信千世氏が、無所属で出馬する平岡秀夫元法相に対し、わずか5ポイント差に迫られているという。官邸関係者が事情を明かす。
「5選挙区のうち山口2区と4区、それに自民党が強い和歌山1区の3選挙区で勝ち、野党が強い参院大分選挙区と、自民党議員が不祥事で辞職した千葉5区の劣勢を挽回して、少なくとも4つは欲しいと、岸田首相の周辺は皮算用をしてきました」
岸田首相のウクライナ電撃訪問、日韓関係の改善などで内閣支持率が上昇しているのと合わせ、4つ以上勝てば、5月の先進7カ国首脳会議(広島サミット)でさらに勢いをつけての会期末解散も、選択肢として浮上してくる。
ところが、この皮算用を根底から崩す「山口2区危うし」との情報が、官邸に入ってきたのだ。信千世氏は病気のため2月に議員辞職した父・信夫氏、そして昨年7月に暗殺された伯父の安倍晋三元首相の思いを背負って出馬しただけに、勝利は確実とみられていた。
「その安心感が陣営に緩みを生じている。候補者本人も事務所も、選挙をナメているからだ」
と憤るのは、自民党の山口県議だ。対抗馬の平岡氏は補欠選挙も含めれば過去4回、山口2区で勝利した実績があり、加えて知名度もある。
「楽勝ムードが先行しすぎたが、相手を見れば簡単ではないことはわかっていたはずだ」(前出・山口県議)
岸氏が所属する安倍派の取り組みにも問題がある、と語るのは安倍派の若手議員だ。
「安倍派では所属議員らが自発的に選挙区に応援に入っているが、派としての応援態勢がとられていない。安倍元首相の時は求心力があったが、会長不在となってからは、派閥として機能していない」
安倍派では高木毅国対委員長が事務総長を務めるが、
「国対の宴席では『おらが大将』とばかりに仕切りたがるが、選挙では応援の割り振りもせず、マネージメント能力が欠如している」
そう言って、先の安倍派若手議員は問題視するのだ。
最終的に陣営が引き締まれば大丈夫だろうとみられてはいるが、仮に負けるようなことになれば、岸田政権に与える打撃は大きい。