ある朝日新聞若手記者が地獄の「サツ回り」を経た「2年目」を振り返る。
「夏の高校野球取材があります。自分は2年目でしたが、3年目で行く記者もいます。朝日が主催していますから、主催者特権があるんですよ。まず帽子が違う、また球場で与えられる記者ブースも違う。よその記者が汗だくで試合を見ているのに、クーラーの効いた部屋で試合を見られることもあります」
自分が配属された場所の代表校が甲子園に行くと、選手と同じバスで移動し、宿舎に泊まるという。
「社が主催する行事を『社モノ』と言うのですが、それを一生懸命にやれと言われます。地道な取材より『社』を優先するべきなんだと思うようになる記者は多い。何もしなくても取材が自動的にできるうえに、チヤホヤされます。それで『朝日』が特別であることを実体験するのです」(若手記者)
記者の意識を勘違いさせる夏の高校野球と朝日新聞社の関係について、経済評論家の渡邉哲也氏が問題点を提起する。
「甲子園に出場するのに1校3000万~5000万の経費が必要だと言われています。高野連の単独主催にして、スポンサーを集め、生徒の経済的、肉体的な負担を軽減する方向がベストなのではないでしょうか。利権を悪いとは言いませんが、新規参入ができず、一部の人たちに利益が出る構造体を作っているので、特権化しているわけです。『私物化』しているとも言えます」
さらに、朝日新聞の高額給与が「エリート意識」を加速化させるという。30歳を前にして年収1000万円の大台は、新聞業界のトップクラスだ。中堅記者が語る。
「年齢給なので、中途採用の人でも同じ額が支払われます。その他に、住宅手当というのがあって家賃の6割を会社が面倒を見てくれるんです。新人時代に先輩記者から『安いところに住んでも損だから、できるだけ高いところに住めよ』なんて言われました。当時、独身でしたけど、最初の配属先ではファミリータイプの2LDKのマンションに住んでいましたね」
この厳しい時代にあって、自分たちが大台の給与をもらっていることを、多くの朝日記者は複雑な気持ちで受け止めているという。
「仲間内で給料の話をすると、『こんだけもらっていて、庶民の気持ちなんかわからないよな』とぼやくこともあるんです」(中堅記者)
地方を経た記者たちは、やがて東京、大阪、名古屋、西部などの「本社」へと配置される。多くのサラリーマンと同じように「査定」があるが、朝日新聞はどのような仕組みなのだろうか。「上からU⇒S⇒A⇒B⇒C⇒Dにクラスが分かれていて、各クラスの間に『AA』などがあり、13段階になっています。『U』はウルトラの略です。『企画力』『取材力』などで判断されます。しかし、Uが付けば出世するかというとそうではなく、多くの場合、上司に気に入られたほうが出世が早い。リスクを冒してネタを拾うより、上司の言うことを聞く方向に向かう傾向があります」(朝日新聞社社員)