リベラルな新聞と言われる朝日新聞だが、記者全員が特定の思想に染まっているわけではないという。
若手記者がこう弁明する。
「朝日の若手記者の多くは反日や左翼といった特定の思想を持っていません。採用基準が原因だと思うのですが、いわゆる『真面目』なタイプが多いのです。一方で上の世代は思想に染まった人が多く、それをその下が聞き‥‥となって紙面ができます。そうしているうちに染まっていくのです」
上司の中には、作家になる前に産経新聞の記者だった司馬遼太郎を例にあげて、このように部下を教育する人もいたという。
「朝日はスクープで食っている。産経から司馬遼太郎を引き抜こうとした。しかし、朝日のクオリティに自分が追いつかないことを恐れて彼は断ったんだ」
こうした「特権意識」を植え付けられながら、記者たちの取材は上から目線の「強い」ものになっていく。全国紙のベテラン社会部記者が、朝日記者の「モンスター」ぶりを語る。
「取材対象者を何とか懐柔しようとするのが多くの記者なのですが、朝日の記者は『知ってるんでしょ? しゃべってくださいよ!』とかなり高圧的に詰め寄ることが多いのです」
また別なジャーナリストは、事件の加害者の母親が寝込んでいるところに突撃を繰り返す朝日記者の姿を振り返る。
「自殺が心配だったので、現場にいた記者全員が家の前に立ち尽くしていました。ところが、朝日の記者だけは30分に1回ピンポンを繰り返すのです。知らないと思って、『寝込んでますよ』と助言すると『だって中にいるんでしょ?』と、平然とした顔でしつこくピンポンを押していました」
04年に奈良で発生した小1少女殺害事件では、朝日は被害児童の両親に手紙と子供を事件で失った犯罪被害者の本を同封し、両親が「精神的苦痛を受けております」とコメントを出した。
「他社からも『強い』と言われます。理由の一つは『証言を取ってこい』という上司の命令を優先するから。もう一つは朝日を名乗って強く言うと、取材が成功することが多いからです。そんなことからクセになってしまう記者が多いのです」(中堅記者)
アパホテルの元谷外志雄代表は「慰安婦記事検証」を受け、夕刊フジで自社の朝日新聞への広告出稿の停止を宣言し、
〈他の日本企業も抗議の意思を示すべきだ〉
と呼びかけた。新聞社にとって広告収入が減ることは大きなダメージとなることは明らかだ。
「多くの人から間違いを指摘されながら32年放置したことに最大の問題があります。朝日新聞社はガバナンス(企業統治)の不全が生じているわけです。一方で、一般の上場企業は、株主のリスクを回避するために、取引先のガバナンスを監視する義務があります。ガバナンス不全の企業とは取り引きしてはいけないとされています。広告出稿も『取り引き』です。上場企業にとって朝日新聞への出稿が問題になる可能性があります」(渡邉氏)
もっとも朝日新聞は、同社に批判的な記事を掲載した「週刊文春」「週刊新潮」の9月4日号の広告掲載を拒否し、新たな論争を生んでいる。朝日はどうあるべきかを前川氏が語る。
「きっちりした紙面を作ること、これしかないです。最近は1面全部を使って、中でも全面を使う記事がたくさんあります。昔はコンパクトに書けと言われたものでした。新聞は事実報道ですから、読み物的な体裁はなかなか作れません。コンパクトな事実報道に戻るべきだと思います」
9月には福島第一原発の「吉田調書」が発表されることで新たな火種がくすぶっている。朝日を巡る論争はしばらく続く勢いだ。