テリー 安倍内閣の支持率が少し下がってきているじゃないですか。世論調査を見ると、集団的自衛権を閣議決定した時の国民への説明がまだまだ足りないという意見が多いですね。
石破 「集団的自衛権とは何か、政府からの説明でよくわかりましたか」という質問に、自信を持って「はい」と答えるのって、なかなか勇気がいることだと思うんですよね。
テリー 確かに。集団的自衛権に関しては、正直、僕も全てを理解しているとは思えませんから。
石破 わからないのが当たり前なんです。というのは、この国では小学校から大学まで自衛権について何も教えていません。そもそも「国家とは何ですか」とか、「国家主権とは何ですか」といったことも教えていない。さらには軍隊もいないことになっているし、例えば「自衛権と警察権は、いったい何が違いますか」という質問に至っては、まず98%の人がわからないでしょうね。
テリー そうでしょうね。
石破 そういったベースになる知識をまったく学んでこなかった。それは日教組のせいでもなくて、我々大人たちや政治家の責任なんですけど、そんな中で「集団的自衛権」という概念がボーンと出て、「それは当然だ!」と主張しているのは産経新聞だけで、「そうだろうなあ」と言ってるのが読売新聞、まあ中間が日経かな。毎日、朝日は絶対反対、東京新聞はその2誌よりさらに反対派。そうすると、東京しか読んでない人、朝日しか読んでない人は「こんなものはとんでもない」と思うのが普通ですよね。
テリー それから、マスコミというのは、どこかアンチテーゼにいるほうがいいというところがありますからね。
石破 「反権力」のほうがカッコいいものですしね。だから、徴兵制になるとか、アメリカと一緒になって地球の果てまで行って戦争するとか、これで日本は戦争できる国になったとか、自衛官の身が危険にさらされるとか‥‥そういった主張も出てくる。
テリー ただ、自衛官の身が危険になる可能性は多少はありますよね。
石破 それは個別的自衛権(自国を防衛するために必要な武力を行使する、国際法上の権利)でも同じことなんですよ。
テリー でも、集団的自衛権になると、どうしても危険の範囲が広がりますよね。
石破 集団か個別かと危険かどうかには直接の関係はないし、自衛官というのは、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の付託に応える」という誓いをする人しかならないんです。でも、この「集団的自衛権」というテーマって、街頭演説にまったく向かないんですよね‥‥。
テリー テレビの視聴率も取れないですよね。
石破 そうなんです、下がるんですよ。でも、それでも道に立ち、説明させていただくんです。渋谷駅前や、新宿駅前で街頭演説をする。そうすると、有事法制の時もイラク派遣の時も、最初は賛成が20%とか30%だったけど、最終的には50%までいくんですよ。我々の側が、どこまで説明できるかにかかってるんですね。