テリー 先日、レディー・ガガが羽田空港で寛斎さんデザインの服を着ていましたね。ガガとはどういったつながりがあるんですか。
寛斎 去年、ロンドンでショーをやったんです。ロンドンで私自身がショーを開催するのは、四十数年ぶりだったんですが、その映像が全世界に発信されたんです。それをガガの関係者が見たらしいんですね。
テリー それで向こうからコンタクトがあったんだ。寛斎さんの活動は国際的にすごく評価されていますけど、寛斎さんご自身は今、日本のファッションの世界をどのように感じておられるんですか。
寛斎 今の若い人の目は、昔の(自分のファッションに対して)冷たかった目線よりはよくなっていると思います。ただ、楽観的になれない部分もある。というのは、私はちょうど70歳になるんですが、私が生まれた頃に終わった戦争で、日本が戦っていた国がわからなくなっている世代が登場しているんですね。つまり、原爆を落とした国がどこかわからなくなっている。その方たちが、一方で私のファッションを理解してくださるようになっていると。
テリー 最近の、特に若い人のファッションはいかがですか。
寛斎 よその国と比較してどうのこうのというふうに思わなくてもかまわないと私は思っていますが、強いて言うなら、今年の夏、ずっと日本にいて感じたことは「足を出す」ことに関しては世界一かもしれませんね。
テリー 若い女性が、足を出すことはいいと。
寛斎 まったく問題ないと思います。東京の青山界隈にいると、日本が老齢化しているとはまったく感じません。だけど、私自身が楽に過ごせる場所は、少なくとも日本ではないですね。
テリー どこですか、楽ちんなところは。
寛斎 日本よりはむしろ欧米でしょうね。
テリー 寛斎さんにとって、日本はどうしてそんなに居心地がよくないんでしょう。感性や価値観が合わないんですか。
寛斎 丁寧にお伝えしたいことなんですけど、私たち大人の心の中に「人より外れると隣近所に恥ずかしい」という感覚が、いまだにあるんだと思うんです。別の表現でいうと「年相応にしなさい」という感覚です。
テリー ありますね。そういうメッセージが。
寛斎 今や世界はいろんなタブーが取られていって、今残っているタブーというのは、男性がスカートをはくことぐらい。民族服としてはあるけれど、一般的なコーディネートとしてはまだテレビでは見ることがない。その他のタブーはほとんどなくなってきています。でも日本にいると、まだまだある種の締めつけのような空気感があるなと感じます。テリーさんもテレビに出て体を張っていらして、そういう感じってありませんか。
テリー まあ、それはありますね。
寛斎 ありますでしょう。