全国で深刻化する、ホテルや飲食業界の慢性的な人員不足。特に飲食店では時給を1500円以上に設定し、求人をかけるも人が集まらず、コロナの自粛が緩和され客が戻ってきたというのに、ワンオペで営業する飲食店が増えている。
東京都北区の、とある鉄板焼き店。座敷を合わせ、満席時には50人以上の客が入ることもある。しかし、スタッフは厨房1人、店内アルバイト1人で回さなければいけないのだと、店長は顔を曇らせる。
「夜は学生のアルバイトが入ってくれるのですが、昼間は私1人で厨房と店内を回しています。一応、アルバイトは何人かいるのですが、みな学校やら何やらで忙しく、週に1~2回しか出勤しません。ひと昔前であれば、どこの飲食店にもフリーターがいて、レギュラーで働いてくれたのですが…。最近は、フリーターをあまり見かけなくなった気がします」
1990年代半ばから2000年代半ば、就職氷河期と呼ばれた時代には多くの非正規労働者(フリーター)が飲食店などで働き、余剰人員が出ていた。社員登用制度のある飲食店も多く、アルバイトから社員に出世したフリーターは多かった。この店長もそのひとりだという。
当時、飲食店でアルバイトをしていた人たちは、コロナ禍でウーバーイーツなど宅配サービスの配達員に転身した。その結果、飲食店の現場は人が足りない状況に陥っている。
「唯一の望みは学生のアルバイトですが、最近の学生は昔のように稼ぎたいという気持ちが薄く、最低限、遊べるほどの収入があればいい、と話していました。若者の〇〇離れという言葉があるように、物やお金に執着しない人が増えているんでしょうね」(前出・店長)
世間が夏休みに突入し、これからさらに客入りが望める時期にワンオペ営業では、店員の身がもたないだろう。