08年から開始した「ふるさと納税」制度。自分が生まれ育った故郷だけではなく好きな地方自治体に寄付できるこの制度によって、鳥取県が他県を圧する破竹の勢いで税収入の確保に成功しているという。
「ふるさと納税」という言葉を聞いたことがあっても詳しくは知らない人も多いことだろう。名称に「納税」とあるが、寄附金控除の一種で、寄付した金額のうち2000円を超える分は控除の対象となり、確定申告をすれば所得税や住民税から差し引かれる制度だ。例えば1万円寄付すれば、8000円は戻ってくる計算となる。ただし、1回寄付するごとに2000円を負担するわけではない。3つの自治体に1万円ずつ、合計3万円寄付したとしても、実質負担額は2000円で済む仕組みだ。
寄付金の上限額は給与や家族構成によって異なるため、事前に総務省のサイトをチェックする必要があるが、税金が軽減される以外にもメリットがある。寄付金額に応じて特産品や宿泊券などの特典がもらえることだ。「ふるさと納税達人」の金森重樹氏が語る。
「物がもらえるという点では株主優待と似ていますが、ふるさと納税は、株価の上がり下がりに一喜一憂する必要がない。また、5000円寄付するだけでお礼を送ってくれるところもあり、初期投資が少なくて済むのが利点。物がもらえるうえに控除額も大きい制度は他にはなく、究極の節税対策です」
利用者は年々増加傾向にあり、共同通信の調査によれば、13年度は計4万5292件、総額12億6167万円。うち鳥取県は3億3606万7003円と、全体のおよそ28%ぐらいの金額に上っているのだ。
鳥取県が人気を獲得できた理由を、鳥取県庁ふるさと納税担当者に聞いた。
「昨年11月に実施した、ホームページのリニューアルが功を奏しました。当時は珍しかった、寄付金はクレジットカードで即時決済、特典をその場で選んで5分で入力が完了するシステムを採用したことで、メディアに取り上げられて注目度が高まったのです。寄付金の用途を『子供たちの健全育成』と明確にしたことも、利用者には好評だったようです」
前出・金森氏は、特典も勝機をつかむ一因になったと付け加える。
「県、市町村ともに、鳥取県は他県と比較すると特典のバリエーションが圧倒的に多い。10種類ぐらいの中から選ぶのが平均ですが、例えば鳥取県なら、1万円以上2万円以下の寄付金額で選べる品は27種類。利用者は選ぶ楽しみにも魅了されたのでしょう。特に、鳥取県産のブランド肉とカニは絶品で人気があります」
写真は鳥取市の「鳥取牛牛丼の素・鳥取ビーフハンバーグ詰め合わせ」(各5個ずつ)と、「くらら生乳アイスお届け便B」(4種類12個の詰め合わせ)、境港市の「境港産紅ズワイ 脚肉・爪肉セット」(各500グラム)。
どれも寄付金額1万円の特典で、牛丼とハンバーグは大人の男の腹を満たすボリューム感。金森氏によれば、「生肉は解凍の際、味が落ちることがありますが、加工品は日持ちがするし冷凍庫内の場所も取らないのでオススメです」とのことだ。カニはあらかじめ剥いてあるため食べやすく、アイスは牧場でしか食べられない濃厚な味わいで、いずれも美味だ。
人気の特典はすぐに売り切れてしまうが、鳥取市と境港市に問い合わせたところ、甲羅付きのカニは漁の都合で11月から特典のラインナップに並ぶとのこと。寄付という“ちょっといいこと”をした気分を味わいつつ、豪華な夕食を楽しむ絶好の機会かもしれない。