このような状況下において欧米では、サイバー主体に舵を切る中国に、先制攻撃をくらわせる姿勢が見て取れるという。山田氏が解説する。
「FacebookやX(旧Twitter)などのSNSでは、中国の役人や戦略支援部などが正体を隠して習近平体制を賛美したり、日米、台湾などを貶おとしめたりする世論操作のメッセージを大量発信する工作が日々なされています。これは、カムフラージュ(偽装)とスパムメールから『スパムフラージュ』と名付けられ、国際社会で危険視されるようになっているんです。そのためFacebookの親会社であるメタ社はこの度、9000件に近い各SNSのアカウントを『中国法執行当局の関係者とつながりがある』として削除しています」
偽情報を拡散させる芽を摘み、中国のサイバー攻撃を封鎖しようというわけだ。今後、この動きは加速し、デジタルの世界でも強固な対中包囲網が敷かれることになるという。
放出から約2週間が経過した9月6日、日本の外務省にあたる中国政府の外交部担当者は定例会見で、
「原発汚染水を処理水と呼称しようとも、汚染水中の放射性核種が消失することはない。日本はこの事実を注視する必要がある」
と、厳しい口調で非難。少なくとも、すぐに態度を改めることはないようだ。
これに先立ち、小池百合子東京都知事(71)は3日、東京都庁への中国語嫌がらせ電話に対し、処理水の安全性と日本より多い中国原発のトリチウム処分量を訴える自動音声案内を導入した、と発表した。
しかし、これはあくまでクレームへのリアクションでしかない。一方で、中国の国番号「86」から始まる電話番号を一括着信拒否するサービスを開始した民間企業も現れてきている。
日本政府の対応は鈍い。このまま広い中国の水面下でうごめく「反日嫌がらせ」集団を野放しにし、専守防衛に徹しているようでは、日本はサンドバッグのように打たれ続けるだけ。まさか、小泉進次郎元環境大臣(42)の「サーフィンアピール」だけですべて解決すると思ってはいないだろうが‥‥。
富坂氏はこう訴える。
「中国当局にはなかなか改善しない米中関係の中、実は両国を取り持つ日本との関係悪化を避けたい、という思惑も少なからず存在します。ある意味、コントロールが利かない反日行動に、頭を抱えている部分もあるでしょう」
今こそ日中間の温度差をただす政府の本気度が問われよう。