宣言するも地獄、残るも地獄。海外FA権行使で揺れる巨人・中田翔が、微妙な立場に追い込まれている。スポーツ紙プロ野球担当デスクは次のように話す。
「坂本勇人が三塁に定着し、岡本和真の一塁というのが、来季の巨人の基本線となるかもしれない。そうなると、今季後半戦にめっきり出場機会が減った中田は来季、さらに出番が少なくなることは確実。本人はFAに関しては熟考すると言っていますが、出場機会を求めて宣言することになるのでは」
過去、パ・リーグで3度も打点王タイトルを獲得。ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞にも5回輝いた名選手だ。だが、今季の出場はわずか92試合。打率2割5分5厘、15本塁打、37打点の成績に終わっており、現実はそれほど甘くないというのがもっぱらの見方だ。
「打力に問題のある中日や、DH制があるロッテが欲しがる可能性は確かにあります。ただ、今季の推定年俸が2億4500万円と高額で、FAで獲得すれば人的補償が発生する。34歳という年齢を考えれば、なかなか手を出しにくい選手でしょうね。大幅年俸ダウンでのFA移籍なら可能性はありますが」(スポーツ紙遊軍記者)
場合によっては今年も宣言せず1年契約、あるいは宣言残留ということも考えられるが、そうなれば大幅な年俸ダウンは免れない。さらに残留となれば、どんな扱いが待っているかも分からない。前出の遊軍記者が、その危険性を指摘する。
「巨人は力が衰えたベテランには厳しいチーム。FA移籍した工藤公康や江藤智は、FAで入団した選手の人的補償として他球団に出された。落合博満や清原和博も巨人で現役をまっとうすることなく、退団しています。チームに残れば、中田が同じ道を辿る可能性は十分にあるでしょう」
もちろん、来季は阿部慎之助監督の下、完全復活する可能性も十分にある。だが、新監督という人種は特に、力が落ちてきたベテランより上り調子の若手を使いたがるもの。中田が来季、背水の陣で臨む必要があることだけは間違いない。
(阿部勝彦)