「黒魔術」という言葉を聞いたことがあるだろう。一般的に、家族や知人の幸福や吉兆を促すとされる「白魔術」と違い、気に入らない人物の不幸を願い、他人に危害を加えたり、最悪の場合は相手の死を望む「負の魔術」とされてきたのが「黒魔術」だ。
インドネシアでは今も民間伝承として、黒魔術が生活に密着しているが、昨年12月にはこれを禁止する法律が施行された。刑法で「他人の不幸を望む事例を対象に禁止」したのだ。とはいえ、実際の運用は難しいというのが、大方の見解だ。
インドネシアをはじめ、東南アジアでの黒魔術には杖や水晶玉、あるいは人形などの道具が用いられることが多い。マレーシアの海岸で、古くから伝えられるトヨール(小人の悪魔)らしき謎のヒト型生物の像をかたどったミイラが、瓶に入った状態で発見されたのは、2006年2月だった。ミイラは発見した漁師の手により、マレーシアの州立博物館に寄贈されることになったのだが、
「トヨールというのは呪術師により蘇った、死んだ赤ん坊の悪魔。東南アジアに古くから伝えられる伝説のUMAです。トヨールは指示を受けて、他人の家に侵入し金品を強奪したり、時には殺人に及ぶ恐ろしい悪魔で、それを蘇らせるのが黒魔術。その際に用いるのが、このトヨール像だといわれています」(UMA研究家)
トヨール像のもとになるのは胎児の遺体で、黒魔術師たちの間には、胎児を売買する闇ルートがあるという。それを特殊技術によりミイラに加工し、その像で魔物トヨールをこの世に生み出すのである。UMA研究家が続ける。
「蘇らせたトヨールを操るためには、毎朝コップ1杯の牛乳をトヨール像に与え、おもちゃや衣類、ビスケットなどの菓子を供える。さらに黒いキャンドルを置き、お香を焚いて呪文を唱えながら、自らの血をそれに振りかけるというのが習わしなのだと…」
トヨールに悪事を遂行させたのち、処分する際には、瓶に入れて海などへ流する場合が多い。マレーシアで見つかった瓶入りトヨール像も、おそらくは何も知らない漁師が引き上げてしまったわけだが、
「しばらく博物館に展示されていたようですが、関係者に次々と不幸が連続して起きたことで瓶は呪術師に預けられ、再び海に遺棄されたといいます」(前出・UMA研究家)
げに恐ろしきトヨール伝説だが、海に投棄された瓶がまた誰かに拾われたら…。
(ジョン・ドゥ)