巨人の宮崎秋季キャンプで、野手陣は石井琢朗・新野手総合コーチの「変則ティー打撃練習」で徹底的に鍛えられた。
下半身の使い方を意識させるための膝元へのボールトス、強い投球に力負けしないためにバットを振り下ろす高めのへのトス、硬球よりも大きいソフトボールを使ってのスイング…。練習のレパートリーが増えることはもちろんだが、広島時代の丸を始めとする現主力選手たちや、東京ヤクルト・村上隆行がこの練習で成長したとなれば、巨人若手も必死に付いていくしかないようだ。
そんな巨人若手の中から、石井コーチのお眼鏡にかなった選手が現れた。北村拓己だ。一軍戦にまだ6試合しか出場したことのないプロ2年目の内野手である。
「中堅、若手が交互に石井コーチのもとに行き、トスを上げてもらいました。顔見せというか、選手の自己紹介もかねてなんですが…」(スポーツ紙記者)
北村が顔付近のボールを振り下ろすティー打撃を終え、小休止していた時だった。石井コーチは打撃ゲージ付近で他選手の打撃を見守っていた元木大介ヘッドコーチに向かって、「ヘッド。北村、いいですよ」と声を掛けた。元木ヘッドが何かを言い返したが、石井コーチは「北村、いいです。本当に」とさらに強調したのだ。
北村は星稜高、亜細亜大学を経て巨人入り。今年5月、プロ初スタメンのチャンスももらったが、まだ一軍戦で1本のヒットも放っていない。石井コーチと元木ヘッドのやりとりには、原辰徳監督もニンマリといったところだが、こんな光景も見られた。
「岡本和真は石井コーチとのティー打撃後、1メートルほどのロングバットを持って、外野ポールの間を素振りをしながら何往復かしていました。レギュラーになるヤツは、練習でも『自分流』を構築しています」(ベテラン記者)
コーチが入れ代われば、選手の評価も変わる。素質を持った若手がまだ埋もれているのだ。巨人はFA宣言した千葉ロッテ・鈴木大地内野手との交渉を終え、手応えも感じていたそうだが。
(スポーツライター・飯山満)