「ど真ん中を狙って投げてみて」
これは巨人・阿部慎之助監督が秋季練習で横川凱、畠世周の両投手にブルペンで指示した言葉だ。コースに投げられないからど真ん中を狙え、というもので、阿部監督はこう説いている。
「逆の発想じゃないけど。コース狙って真ん中いくのが打たれるんでしょ。ど真ん中に投げ込む度胸があるかないか。最後はそういうところになると思う」
これに異を唱えたのは、野球解説者の江川卓氏だ。自身のYouTubeチャンネル〈江川卓のたかされ【江川卓 公式チャンネル】〉10月17日の回で、次のような持論を展開した。
「ど真ん中、投げるかな。投げられる人と、投げられない人がいる。フォアボールよりヒットの方がいいじゃん、って思うじゃないですか。一塁に行くので一緒なんですけど、これピッチャーとキャッチャーの感覚の差があるんですよ。キャッチャーはストライク取れよってサイン出すんですけど、ピッチャーはココまでは分かってるんですよ。ココまでいって、やめるんですよ。なんでやめるかっていうと、恐いからです」
「ココ」とは、球が指先を離れる直前を指す。その瞬間、コースのギリギリを狙おうか、それともボール球にしようか迷うのだと、身振り手振りで説明したのだ。
そうえいば、3度の三冠王に輝いた落合博満は現役時代、苦手としていた投手に、広島で最多奪三振を3度達成した川口和久を挙げている。その理由は「ノーコンだったから」。頭部への死球を警戒していたのだ。その川口はかつて、ど真ん中のボールを見送る落合について「不思議な思いだった」と振り返っている。
阿部監督の指示も落合と同様に「ど真ん中にくるはずがない」という打者心理の裏を突いたものなのかもしれない。これが巨人投手陣の意外な武器となるかどうか、来季になればわかることだろう。
(所ひで/ユーチューブライター)