今、東京のあちこちで駅前の再開発が進んでいる。大衆的な飲食店や昔ながらの個人商店が並ぶ京成立石駅は、駅の北側と南側が再開発中。どちらも高層複合ビルが建つ予定だ。
十条駅西口地区も再開発事業が進められ、地上39階の複合ビルを中心とした新たな街が作られる。
そこに西日暮里駅が加わることになる。西日暮里駅前地区の再開発事業社に東急不動産が決定した。
東急不動産の発表によると、西日暮里駅の北東にある2万3000平米の土地を再開発し、地上47階程度の住宅棟と地上11階程度の商業棟ができる予定。2030年竣工で完成すれば今とは全く違う西日暮里駅前が誕生する。
これに驚きを隠せないのが鉄道ファンだ。JR西日暮里駅は隣の日暮里駅まで距離わずか500メートル、もう1つの隣駅である田端駅とは800メートルしか離れておらず、「山手線で一番不要な駅」などと呼ばれることもある。そんな西日暮里駅前にタワマンが建つとは想像できないのだという。
日暮里駅の近くに駅を作ったのは理由がある。鉄道ライターが解説する。
「JR常磐線が複々線化されることになり、緩行線は今の東京メトロ千代田線に乗り入れることになりました。緩行線の利用客が上野方面に出やすいように西日暮里駅を作り、山手線と京浜東北線に乗り換えられるようにしたんです。開業したのは山手線の駅としてはかなり遅い1971年。街があるところに駅を後から作ったため駅前が大規模開発されることはなく、路地が入り組んだ町並みが残っている。駅前にロータリーもありません」
そんな西日暮里駅前が再開発されれば、駅の印象も大きく変わりそう。マイナーな駅とはいえ、山手線に乗れば東京駅へはわずか約13分。「住みたい街」の上位に入ってもおかしくない。
(海野久泰)