鉄道ファンの間で最も話題になる列車が「お召し列車」だ。運行が決まると日時やルート、正確な時刻を知ろうとファンの間で情報交換が盛んになる。特に撮り鉄はめったに走らない貴重な車両を撮影しようと、何がなんでも時刻表を手に入れようとする。
鉄道ファン垂涎のお召し列車は天皇、皇后、上皇、上皇后、太皇太后、皇太后が公務のために移動する際に乗る列車のことで、専用の車両で運行される。昭和時代には多く運行されたが、近年は減っている。理由を鉄道ライターは、
「お召し列車を運行するには多くの人手がかかります。鉄道関係者はもちろんのこと、沿線の警備のために警察官の人手も割かないといけません。また既存の時刻表に手を加える必要も出てくる。関係者の負担が大きいため、昭和天皇がお召し列車の運行を控えるようにしたと言われています。今は新幹線を利用することが増え、お召し列車の運行は減りました」
お召し列車はこれまで皇室専用の客車「一号編成」を機関車が牽引してきたが、2007年に車両を一新。「なごみ」の愛称を持つ「E655系電車」がお召し列車として活躍している。
一号編成は庶民が足を踏み入れることもできない聖域だったが、なごみは普段、団体専用列車として運用されている。つまり、ツアー商品として乗車することができるのだ。
ただ、陛下が乗る車両はさすがに乗車できない。
「団体専用列車として運行される時は5両編成ですが、お召し列車の時は真ん中に『TR』と呼ばれる特別車両を挟み6両で運行します。TRは定員18名で皇室や国賓しか利用することができません。車体の外側中央にくぼみがあり、菊の御紋を取り付けることができるようになっている特別な車両です」
ツアーは上野や新宿など23区内の駅からJR東日本の圏内を走る。ツアー料金は様々だが、安いものは3万円前後。陛下と同じ列車に乗れると考えれば決して高くはない。
(海野久泰)