今年4月の東京都江東区長選で初当選した木村弥生氏の陣営が、違法な有料ネット広告を掲載していたとされる公職選挙法違反事件は、木村氏を支援していた法務副大臣(事件発覚後に辞職)の柿沢未途衆院議員(東京15区)による選挙買収疑惑へと発展した。
新たに浮上した選挙買収疑惑の最大のポイントは、柿沢氏や秘書らが複数の江東区議に配ったとされるカネが、区長選と同時期に行われた区議選の陣中見舞いだったのか、それとも木村氏を当選させるための工作資金だったのか、という点だ。当然ながら、後者であれば重大な公選法違反(買収)に該当する。
東京地検特捜部は柿沢氏サイドが作成した「現金配布リスト」を入手し、実際に現金を受け取った区議らから任意で事情を聴いているとされる。疑惑解明に向けた特捜部の本気度は、どれほどのものなのか。全国紙司法担当記者が明かす。
「特捜部はヤル気満々です。11月3日からの3連休中も、柿沢氏の後援者や関係の深い都議らに、軒並み事情聴取の要請が入ったくらいですから。特捜部は柿沢氏らによる現金の配布が今年2月から始まっていたことを確認しており、『4月に行われた区議選の陣中見舞い』という柿沢氏の説明が理屈に合わないことを見抜いています」
しかも東京地検特捜部には、この事件を是が非でも立件に持ち込みたい切実な理由が存在すると、この司法担当記者は指摘するのだ。
「特捜部は河合克行・案里夫妻による選挙買収事件に際し、カネを受け取った広島市議らに対する供述誘導問題で、世間の批判を浴びました。買収の規模こそ違うものの、その河合事件と全く同じ構図にある柿沢事件はまさに、特捜部にとって『汚名返上』の絶好の機会なのです。国会議員には国会会期中の不逮捕特権が付与されているわけですが、場合によっては許諾請求という伝家の宝刀を抜いて、今臨時国会中の電撃逮捕に踏み切る可能性も出てきました」
鬼の特捜では今、前法務副大臣逮捕のカウントダウンが始まっている。
(石森巌)