9月に宙組の現役俳優が自宅マンションから転落し、自殺した宝塚歌劇団。イギリスBBCの報道を機に、一気に崩壊した旧ジャニーズ事務所と同じく、性加害や陰湿なイジメが半世紀近く語り継がれてきた。ヅカ女優と結婚した日から、肉親とファンの壮絶な嫌がらせが始まるーー。
筆者が、役者が集まる下北沢の居酒屋でそんな「怖い話」を聞いたのは、今から10年以上前のことだ。元宝塚女優と離婚した元夫が、離婚届を出すまでの苦悩を吐露したのだった。
「結婚する際に、妻の母親に約束させられたのが『娘にはファンクラブを支えるファンがいるのだから、ファンの夢を壊さないために、子供は諦めること』。そして『身分不相応な男が大事な娘と結婚できるだけ、ありがたいと思え』と言われました。最初の嫌がらせは、新婚旅行から帰って間もなくのこと。新居マンションのカギが勝手に換えられました。妻は仕事で不在にしており、妻から合鍵を渡された母親と妹が勝手に自宅マンションに押し入り、鍵を交換した。自分だけが締め出されたのです。次にあったのが、ファンからの嫌がらせ。自宅玄関に、墓に供える仏花が置かれていました」
仏花には、この男性の死を願う脅迫文が添えられていたという。
「私物を勝手に処分するなど、母親や姉妹が実力行使に出ることもあれば、同じ組だった後輩俳優やファンに指示して嫌がらせをさせることもありました。なぜかといえば、母親と姉妹は、せっかく育てた金ヅルを奪われてたまるか、という欲望ゆえ。後輩やファンは、同性好きとしての憎悪と嫉妬をこじらせているんです。過激なファンに何をされるかわからないので、離婚するまで毎朝のジョギングコースを変えていました。そんな生活にホトホト疲れました」(元夫)
あくまで元夫婦の個人的な身の上話だが、壮絶な結婚生活を聞いている間に夜が明けてしまった。
だが宝塚歌劇団には、元ジャニーズ事務所と決定的に違うことがあるという。元夫がさらに続けて告白する。
「ヅカで最も権力を持っているのは、1公演のチケットをまるごと買い取ってファンにさばく、財力や権力のある親、興業主としてのセンスがあるヤリ手の親なんです。歌劇団の収入源であるチケット販売を一手に引き受ける親には、誰も逆らえない。団員とファンの生殺与奪を掌握しているに等しいのです。もしもの話ですが、実力者の親が気に入らない娘の交際相手やライバルを蹴落とせ、嫌がらせをしろと言えば、ファンと団員は一致団結するでしょう」
今年2月、転落死した俳優が上級生から集団イジメに遭っている、との週刊誌報道が出た後、同歌劇団は「誤ってヘアアイロンが当たってしまったということはあったが、イジメはなかった」と真っ向から否定した上に、イジメ加害者と指摘されている劇団員への誹謗中傷には法的手段をとると発表した。
2月に外部の専門家による調査チームに調査を依頼していれば自殺は防げただろうし、第三者による調査前からイジメ疑惑が出ている上級生だけを庇うなど、歌劇団の対応は一切の公平性を欠いている。
そして恐ろしいことに、宝塚歌劇団は「外部専門家による調査」が始まる前、俳優の転落死直後から、11月25日から始まる宙組の東京公演チケットを売り出した。公演ありきの調査結果など、公表前からタカが知れている。
歌劇団も大概だが、後輩を死に追いやった女優が出演する舞台チケットを買い求める宝塚ファンが、気持ち悪いことこの上ない。
(那須優子)