欧州のクラブに移籍する日本人選手は今や珍しくなくなり、契約や待遇を巡ってトラブルが発生することは少なくなった。しかし、それでも欧州のクラブチームの考え方を知っておくことは日本サッカー界にとって悪いことではない。イギリスのプレミアリーグでプレーした元日本代表の李忠成氏は「欧州クラブの常識」に翻弄されたことがあると、鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルで語っていた。
李氏は2012年にイングランド2部のサウサンプトンFCに移籍。翌年、一度はJリーグFC東京に復帰するが、再びサウサンプトンFCへ。この時、ひどい仕打ちを受けたという。
「日本だと契約が残り3年あると、紅白戦ぐらいは出られます。ですが、海外の場合はいったん監督の構想外になると、契約が残っていても紅白戦に参加できないどころかチームに帯同することすら許されない。構想外の選手が4人ぐらい集められて、『お前ら4人でサッカーしてろ』って言われて野原でサッカーさせられるんです」(李氏)
チャンスは一切与えられず、そこから抜け出すことはまずできないという。なぜ海外のクラブはこんな対応をするのか。李氏によれば、
「契約が3年残っている選手にチームから契約解除を申し出たら、残りの3年分のお金を払わないといけない。選手が自分から『違うチームに移籍します』と言い出したら、残りのお金は払わなくて済む。だから、選手から移籍したいと言い出すために、そんな対応をするんです」
まるで日本企業の「リストラ部屋」のよう。現代の日本では問題になりそうな扱いだが、欧州では当たり前に行われているようだ。
李氏はこの状況から運良く抜け出せたという。
「ある日、『紅白戦をするのに人数が必要』とトップチームに呼ばれたんですね。そこで活躍したらトップチームに戻れて、1年間はチームに帯同できた。しかし、プレミアリーグの試合は出られず、カップ戦だけ。自分が少しだけ復活してきたなと感じられた時点で残りの契約を切って浦和レッズに行きました」
これから欧州を目指す若い選手は李氏の苦い経験を活かしてほしいものだ。
(鈴木誠)