日本サッカー協会(JFA)が「金欠」か――。先ごろ発表された「JFAクラウドファンディング」が波紋を広げている。
JFAはJリーグがスタートした1993年度予算は約35億円だったが、2023年度(1月1日から12月31日)予算では約292億円もの収入があり、67億円超の黒字をみこんでいる。にもかかわらず、1年間で350件の起案を立ち上げ、支援総額はなんと10億円を目指している。
旗振り役は来年4月にJFA新会長に就任することが確実になっている「ツネ様」ことJFA宮本恒靖専務理事で「自分自身もクラウドファンディングにお世話になったことがある」とそのきっかけを話した。
70億円近い黒字を見込んでいるJFAが、なぜクラウドファンディングをスタートするのかというと、JFAの財政が先行き不透明だからだ。
JFAは昨年、自社ビル「JFAハウス」を売却し、「100億円以上の契約」と明かしているが、
「実際は違います。その2倍の200億ちかい金額でした」
とはJFA担当記者。しかし一方で、コロナ禍でドル箱だった日本代表戦で稼ぐことができなくなり、主要スポンサーだった朝日新聞やJALが契約を更新せずに撤退している。
JFAは12月8日に、会長予定者の宮本専務理事が会長選の投票権をもつ79人のJFA評議員に渡した「ともに新しい扉をあけよう」というマニュフェストを公表している。また岡田武史副会長との対談の中で「(予算の)建て直しは重要ですね。予算を組むときは一層の厳しさをもってやっていく必要がある」と言及。要するに、これだけ絶大な代表人気がありながらJFAの財政が不安定であることを示している。ツネ様がその対策の第一弾としてサッカーファンに異例のお願いをしたのが総額10億円のクラウドファンディングというわけだ。
宮本専務理事は新会長になると、年俸3600万円という高待遇が待っている。一方で今年3月、JFA評議員会では常勤役員の報酬アップが決定しているが、「JFAにより優秀な人材の方に来ていただくための決定です。(報酬があがるかわりに退職金がなくなるが)それをフォローするための報酬アップでもない」と断言していたのも宮本専務理事本人。財政が不透明にもかかわらず役員報酬はアップ、そしてクラウドファンディングを募るというのは、あまりに虫が良すぎないか。
(小田龍司)