前述のタリバンが暫定政権を組織する国がアフガニスタンだ。しかし、国際社会はこれを承認せず、情勢は不安定極まりない。そこで注目が高まっているのが「イスラム国ホラサン州」なる反タリバン組織である。タリバンが首都を制圧した21年8月にも、ホラサン州は空港で死者180人超の自爆テロを起こしている。
「その名の通り、ISの思想を反映した、自爆テロも辞さない過激なイスラム原理主義組織です。国内では唯一、タリバン政権に弓を引ける存在で、今後アフガニスタン国内はますます危険地帯になるかもしれません」(山田氏)
アフガニスタン国外にもタリバンが抱える勢力はある。隣国パキスタンの「パキスタン・タリバン運動」だ。パキスタン政府の打倒を掲げて動く、タリバンの「支部」と言える。
過去には国軍学校を襲撃し生徒ら148人を虐殺して、異端視する少数民族を標的とした自爆テロも起こすなど、凶悪さは折り紙付きだ。山田氏は、より純度の高いイスラム原理主義の恐ろしさを指摘する。
「彼らにとって自爆テロは、いわば名誉ある死。自分たちは命を懸けて教義に殉じることができる、と知らしめたいわけです。パキスタン・タリバン運動の自爆テロでは、『見事な殉死』の〝様式美〟が確立していて、爆弾を装着したベストを着込み、爆発後は首だけがポーンと飛んでその場に残るのだそうです」
イスラム圏で激化するテロ組織の動向だが、実は近年、アメリカやイスラエルだけでなく、別の意外な国が攻撃対象として浮上している。それは、アフガニスタンと友好関係にあり、経済も食糧支援も行ってきた中国だという。
パキスタン西部にあるバルチスタン地方の分離独立を目指す反政府組織「バルチスタン解放軍」は22年4月、国内最大の都市・カラチの中国系教育機関「孔子学院」に対し爆破テロを敢行。同組織は他にも、中国系企業や中国人に対するテロ行為をここ数年たびたび行ってきた。
霞が関関係者が言うには、
「イスラム圏の途上国にインフラ整備を斡旋したりと金をじゃぶじゃぶ落としてきた中国だが、借金漬けにしてデカい顔をし続けたことで、各国で反乱分子も育ててしまった。国際テロ組織の矛先は、今やアメリカと中国という世界の『両極』をターゲットにする時代なのです」
この「孔子学院」は現在世界500カ所に設置され、日本でも大学との提携を中心に約20カ所で展開されている‥‥。もはや世界のどこであろうと、テロの脅威から逃げ場がないことを肝に銘ずべきだろう。