公安調査庁のリストから〝謎削除〟された200近いテロ組織の中に、注目の「ハマス」の名があり、世間を騒がせている。有事でもない限り、我々日本人は、こうした凶悪なテロ組織とその動向について、あまりにも無知・無関心だ。今なお死者増加がやまぬパレスチナ・ガザ地区の悲劇は、対岸の火事ではない。何故なら‥‥。
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスは23年10月7日、イスラエルに向け5000発のミサイルを発射(イスラエル軍は2500発と発表)し、同時にイスラエル南部の町・レイムで行われた音楽イベントを強襲、参加者を次々と虐殺、拉致した。
国際ジャーナリストの山田敏弘氏が言う。
「ハマスは人口約220万人のガザ地区を実効支配する組織で、元々は政党として発足し、メンバーは約3万人とも言われます。ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区を統治するファタハと対立し、西欧諸国ではテロ組織と呼ばれていましたが、それでも近年は、イスラム系組織の中では穏健派と見られていました」
日本の公安調査庁が23年度版「国際テロリズム要覧」を公表したのは9月末だった。霞が関関係者は、
「ハマスをリストから外したのは、その認識が背景にあったからかもしれない」
と打ち明ける。一方、イスラエルはすぐさまガザ地区に報復攻撃を開始。結果、民間人を含む犠牲者は2万人を超え、さらに増え続けている。
「その後イスラエル軍は『ハマスを制圧した際にIS(イスラム国)の旗があった』と発表。残虐行為で悪名高く、イスラム原理主義を掲げるISと同格の存在である、と言い切っています」(山田氏)
世界中の誰もが知る過激派テロ組織を引き合いに出すことで、自国の正当性を訴えようとしたのだろう。なお23年12月23日現在、ハマスとイスラエルの停戦交渉は難航している。
パレスチナとイスラエルの対立は根深い。背後にいる中東諸国とアメリカの影響も大きいが、テロの危険に晒されているのは世界でこの地域だけ、というわけでは当然ない。アジアやアフリカなど至る所に過激派組織は潜んでいるのだ。
アフリカの国際テロ組織でいの一番に名前が挙がるのが、ソマリア南部に支配を広げる「アル・シャバブ」だ。首都・モガディシオで17年に爆弾攻撃を仕掛け358人の死者を出したほか、国内のみならず隣国のケニア、エチオピアなどでも爆破テロを繰り返し、土着のソマリ族とムスリムの支配拡大を図ってきた。
「イスラム系テロ組織はIS系、タリバン系、アルカイダ系に大別できますが、アル・シャバブはアルカイダと連携する組織です。仏教で様々な宗派が存在するように、イスラム教も思想の違いから多様な派閥がある。その思想が違えば敵対し、近ければ手を組む、というのが常。つまり同一教義内での陣地争いでも、テロ行為がたびたび起きているのです」(山田氏)
かようにして組織間の連携あるいは衝突が生じ、テロ組織の「裏勢力地図」最新版は更新されるのだ。