これはやはり、自民党の伝統なのか。1月8日にSNSで「小渕優子」がトレンド入りした。なぜ今!?…と思った人は多いだろうが、自民党の派閥政治資金パーティーをめぐり、政治資金規正法違反の疑いで、自民党衆院議員の池田佳隆容疑者が東京地検特捜部に逮捕されたからだ。
特捜部によれば、逮捕に踏み切った理由には「証拠隠滅と逃亡のおそれ」があったという。関係先にあった記録媒体を破壊したのだ。
かつては自民党の小渕優子氏(現・選挙対策本部長)にもそうしたことがあった。2014年、政治資金の虚偽記載で東京地検の家宅捜査を受ける前に、小渕氏の秘書がパソコン、記録媒体にドリルで穴をあけたことは有名な話。以降、「証拠隠滅のドリル優子」の異名をとるようになった。池田容疑者の逮捕により、再びこの「ドリル優子」がクローズアップされることになったわけだ。
池田氏も小渕氏を「師匠」としたというのか。池田容疑者は安倍派に所属。政策秘書と共謀し、一昨年までの5年間に安倍派から4800万円余りの裏金キックバックを受けたにもかかわらず、資金管理団体の収入として記載しなかった。
1月8日付の朝日新聞によると、検察が正式起訴するおおよその基準は「1億円」で、悪質な場合は逮捕、起訴してきた。今回は書面審査で罰金を求める略式起訴が相場とみられていたが、年末に池田容疑者の国会事務所へ家宅捜査に入ったところ、証拠破壊の痕跡が認められたという。「ドリル優子」の手法を模倣したかどうかはともかく、余計なことをしたせいで逮捕されたというわけだ。そしてこの逮捕をきっかけに、小渕氏への中傷もSNS上に登場する。
小渕氏は2015年に約3億円の政治資金を虚偽記載したとされ、元秘書2人が有罪になった。ドリルで穴をあけたことも、裁判では「証拠隠滅」とは認定されなかったようだが、3億円という額の大きさからすれば「小渕氏本人がなぜ逮捕されなかったのか」という疑問はいまだ残る。
安倍派シンパと思われるSNSの投稿では、小渕氏を格好の比較材料として「やはり安倍派潰しが、今回の検察の狙いだ」との書き込みも目立っている。
自民党は岸田文雄総理の肝いりで「政治刷新本部」を設置し、1月中に政治資金の問題について、一定の結論を出す方針だが、政治資金の問題が起きるたびに、小渕氏の「ドリル問題」」が取り沙汰され、党のイメージダウンは避けられない。党五役の一員である小渕氏が政治刷新本部に参加するのは党の慣例ではあるが、岸田総理は今後、小渕氏の対応も考慮しなければならないだろう。
(健田ミナミ)