自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)などが政治資金パーティー券収入の一部を所属議員にキックバックし、政治資金収支報告書に記載せず、数億円にのぼる「ヤミ金」を捻出していた疑惑は、新たな局面に入った。
東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)容疑での捜査を本格化させ、議員秘書や議員本人を任意聴取しており、安倍派と二階派の事務所にも強制捜査が入った。
「一部民放テレビ局が12月18日に『先月亡くなった細田博之前衆院議長からキックバックについて具体的な指示を受けた、と証言した議員がいる』と報じましたが、これは驚きましたね。死人に口なし、もいいところです。亡くなった細田氏に罪をなすりつけようとしたところで、安倍派の5人衆はもう『詰んだも同然』。2019年の参院選での河井克行・案里夫妻をめぐる買収事件でも『資金提供』の話は出てきましたが、安倍派は官僚人事のみならず、各県連にも札束の『実弾』とともに人事介入して、恨みを買いすぎました」
そう話す立憲民主党の関係者は、安倍派裏金5人衆の「Xデー」に備えて臨戦体制に入ったという。裏金5人衆とは松野博一氏、西村康稔氏、世耕弘成氏、高木毅氏、萩生田光一氏のことである。
「もし秘書だけが立件され、本人は不起訴になっても、検察審査会が審査を申し立てることは確実。過去の事例で言えば、安倍政権での菅原一秀元経済産業相は2020年6月に不起訴処分となりましたが、検察審査会で『起訴相当』と判断されました。その後、東京地検特捜部が略式起訴し、本来なら5年間のところ、3年間の公民権停止となった。安倍派5人衆についても菅原氏と同じく、公民権停止まで追い込まれると想定して、5人衆の選挙区の候補者選びが本格化してきました」
すでに前回の衆院選で落選した立憲民主党の元議員の中には、選挙区替えの準備を始めた者もいるという。
「年明けには通常国会が開かれます。捜査の進展は早いとみて、ある大物候補者は年末年始に支援者への挨拶回りに行く予定で、すでに移転先の物件も決めたそうです」(政治部デスク)
裏金事件はどこまで広がるか。御用納めまで目が離せない。
(那須優子)