「泣いたらおしまい。これで改造内閣は失敗だな」
自民党幹部はテレビに映る小渕優子選対委員長の会見を横目に見ながら呟いた。
岸田内閣が9月13日に行った改造内閣で党4役、選対委員長に選ばれた小渕氏。さっそく自民党本部で記者会見とあいなったが、2014年、自身の政治団体の不明朗な政治資金支出の問題を巡り経産相辞任に追い込まれた件を質問された。
すると小渕氏は「改めて心からお詫びを申し上げたい」と頭を下げ、自身の説明責任については「会見ですべての質問に答え、地元で2年以上かけて誠意をもって説明した。十分に伝わっていない部分があれば、私の不徳の致すところ」などと言い言葉を詰まらせ涙まで見せた。
先の自民党幹部が言う。
「14年の時は東京地検特捜部の捜査中、事務所のパソコンを関係者が電動ドリルで破壊したことから『ドリル優子』とイジられ、その一方で証拠隠滅が囁かれた。これで長らく党の要職から外されてきたが、今回の党4役への復帰で再び党の先頭に立つビックチャンスが回ってきた。だが、過去を突っ込まれてもピシャリと『十分説明してきた。やましいことはない』と強気に行くべきところをあの涙。涙は女の武器とかいうが、今の政治家には禁物だ」
女性政治家で「涙」といえば、最近では16年に安倍晋三内閣で防衛相となった稲田朋美氏がいる。政治部記者の話。
「稲田氏は弁護士で安倍氏に期待され当選3回で自民党政調会長、さらに防衛相と、将来の女性総理候補として英才教育を受けていた。しかし防衛相になると連日野党から激しい追及を受けた。特に当時は南スーダンPKO日報問題で連日紛糾していた時。稲田氏はその答弁に四苦八苦した挙げ句に涙を見せたことで、総理候補としても政治家としても『?』がつき失速してしまった」
今回の小渕氏も要職にあるだけに、初日の涙には与党内で厳しい見方が噴出している。自民党長老が言う。
「国会や会見で追及されるたびに弱気になったり涙を見せていては話にならないでしょ。ましてや野党と戦う選対委員長は強気でなければ選挙でも負ける。岸田もこれで詰みかな」
小渕氏には早くも週刊誌から新たな別の疑惑も指摘され、野党も与党の弱点として小渕氏の過去の問題も含め追及の構えだ。ここから不覚の涙を挽回できるのか。その言動に岸田政権の浮沈がかかる。
(田村建光)