犠牲者が200人を超えた元日の能登半島地震で、被害が甚大な地域については連日、全国放送されているが、福井県、富山県、新潟県にまで地震と津波の爪痕は残っている。心配されるのが、世界中のオカルトファンを惹きつけてきた「モーゼの墓」と「UFOのまち」だ。
平時であれば金沢市から車で1時間あまり、石川県羽咋郡宝達志水町にある宝達山山麓の三ツ子塚古墳群に整備された「伝説の森 モーゼパーク」には、旧約聖書に登場する預言者モーゼの墓があるという。
一部伝承によれば、ユダヤの民をイスラエルに導いたのち、シナイ山に登ったモーゼはその後、「天浮船」に乗って能登宝達山に辿り着き、583歳まで生きて三ッ子塚に埋葬された。
地元の古文書にはそのような古墳の由来はなく、個人が所有していた歴史文書をもとに、一部新興宗教やオカルトのファンが盛り上げた伝説にすぎない。だが、1980年代後半からの「ふるさと創生事業」町おこしに乗っかり、1993年に同公園が整備された。
「令和6年能登半島地震 変動地形調査グループ」の調査では、能登半島は東西およそ90キロの範囲で、陸域が4.4平方キロメートル海側に拡大したことがわかった。中でも被害が甚大だった輪島市では、防潮堤や海沿いの岩礁が4メートル隆起しており、数千年に一度の地殻変動が起きたという。
海が割れて海底が現れた、方舟に乗ったノアの家族と動物達だけが大洪水から免れた、モーゼは天浮船に乗ってきた…。そうした旧約聖書とモーゼの伝説は、地殻変動を伴う数千年前の大地震と津波で被災した古代人が記した「天変地異」を後世に残す、現代人への忠告のようにも解釈できる。
一方、江戸時代に未確認飛行物体の目撃談が相次いだ「UFOのまち」羽咋市のシンボル「宇宙科学博物館 コスモアイル羽咋」は倒壊を免れ、地元の子供達の遊び場や自習場所として開放される。モーゼの墓とオムライスが名物の宝達志水町、UFOのまち羽咋市では、なおも断水が続いている。
オカルトの名所の被災状況についてはわかり次第、紹介する予定だ。
(那須優子)