学生時代は阿佐田哲也の「麻雀放浪記」をバイブルとし、「ニュースステーション」に「雀鬼」の異名をとった桜井章一が出演した際は、数々の積み込み技を披露した姿を、興奮して見ていたものだ。
麻雀とはどこか暗くいかがわしい世界の遊戯であり、徹夜でタバコの煙にまみれながら行う不健康なギャンブル、というのが世間のイメージだろう。そういえば、ゲーセンで100円玉を積み上げ、対戦相手のコンピューター美女を脱がせるために、夢中になったこともあった。
芸能人が麻雀を打つ姿を深夜に流していた「THEわれめDEポン」(フジテレビ系)も毎回、リアルタイムで楽しみに見ていたが、いつの間にか地上波からCSに移動してしまい、やはり麻雀はテレビ向きではないかも、と。
ところが、なんということか。最近、バラエティー番組では、グラビアアイドルでありプロ雀士でもある岡田紗佳が引く手あまたで、おまけに「ぽかぽか」(フジテレビ系)では「麻雀牌積み対決」なるコーナーもある。なにやら麻雀がキテいるような…。
それが確信に変わったのは、この1月にスタートした「ぽんのみち」(TBS系)なるアニメだ。平仮名なので一瞬「ん?」となるが、ようは「ポンの道」。「チーの道」や「カンの道」でなく、あくまでも「ポンの道」だ。
ストーリーをざっくり言うと「広島県尾道市の元雀荘を遊び場にする女子高生たちの日常を描く」もの。過去にはバンド活動を楽しむ女子高校生たちを描いた「けいおん!」や、アウトドアを満喫する女子高校生たちを描いた「ゆるキャン△」などの人気アニメがあったが、今回は麻雀。
どんな中身か気になって1話目から見てみたが、出てくるキャラクターのお胸が、先の岡田もびっくりなほど、みんな巨大。「こんな高校生いたら犯罪だって」っていうほどにご立派で、麻雀のシーンでも配牌(はいぱい)より「ぱいぱい」が気になって仕方ない。
しかも、いざ麻雀が始まると、登場キャラクターの女子高生3人が次々と、「哭きの竜」よろしく「あんた、背中が煤(すす)けてるぜ」と言ったり、「ぎゅわんぶらあ自己中心派」のゴッドハンド氏よろしく「竜巻ヅモー!」と叫んだり、「アカギ」の赤木しげるよろしく「倍プッシュだ」と言ったり、「哲也-雀聖と呼ばれた男」の房州よろしく「明日は雨かなぁ」とつぶやいてみたり。数々の麻雀漫画・劇画・アニメの名ゼリフで遊び倒す始末。いやぁ、面白い。
あくまで登場人物は玄人やギャンブラーじゃなく女子高生がメインで、麻雀は味付け程度にすぎず、展開はユルい。だが、麻雀好きなら思わずニヤリと笑ってしまう演出がてんこ盛りだった(中には「冒涜だ!」と騒ぐ輩もいるだろうが)。
それだけに、勝手に「アニメオリジナルか、原作は『近代麻雀』あたりで連載されてるのかな」と思っていたのだが、先日、書店で「ぽんのみち」の文字が目に入って驚いた。そこは少女コミック誌のコーナーで、しかも「なかよし」の表紙だったのだから。
「なかよし」といったら「りぼん」「ちゃお」と並ぶ三大小中学生向け少女漫画のひとつ。しかもその号の付録は「カード型麻雀セット」と書いてある。
調べたところ、昨年10月号から連載が開始されているらしい。そのうち娘から「パパ、麻雀できる?」と聞かれる日がやってくるのでは…。
麻雀離れがこのアニメと漫画のお陰で解消されるかも!? 女子が集まる場所には男子がやってくるのが世の常。「麻雀女子」が増えれば、「麻雀男子」も増えるはず。そんな若者たちを「いっちょ揉んでやるか」(麻雀で、ですよ)とやれる日が楽しみだ。
(堀江南)