しかし「地方」の長い冬は続くようだ。5月には民間有識者で作る日本創成会議が、「2040年に896の市区町村に消滅の恐れ」という衝撃のレポートを発表した。全国の約半数の市町村で出産の中心である20~39歳の女性が10年の半分以下になり、自治体の存続が危ぶまれるというのだ。
渡邉哲也氏は地方の「選択と集中」が必要だと言う。
「若年層の流出で人口が減り、高齢化を見据えた新しい日本の設計図が必要です。人口10人規模の集落でも道路を敷いて、電気を通して生活させるのは国の義務です。そのために何億円もの予算を投下している地域もある。こうした地域を今後どう集約させていくのか、それが国の課題です」
自民党は来年夏頃までに「地域創生」に向けた都市計画を提示する予定だ。
一方、株高により「老後」に関わる年金問題は好転した。
「株価が上がって富裕層だけが得をしたと批判する人がいますが、大きな間違い。年金の12%から25%は株式で運用されています。民主党政権時に年金運用の総額は100兆円前後。今は株高で25兆円の利益が出て、『年金危機』と騒がれなくなりました」(渡邉氏)
5月18日には、麻生太郎副総理(74)も、講演でこう力説している。
「株で一喜一憂は素人。年金は株式の運用で成り立っている。7月に年金の運用状況が出てくるが、ウン兆円の黒字になる。アベノミクスは株だけではない。いちばん肝心な社会保障の元の元も稼ぎ出している」
年金破綻の問題はひとまず安心だと言えそうだ。しかし、高齢者人口の増加により、現役世代が年金を支給される20~30年後には、給付額が下がることが予想される。定年を70歳まで引き上げ「現役世代」を先送りする方法はあるが、反発の声もある。
定年を延ばせば高賃金労働者を企業は抱えなければならない。再雇用によって一度賃金を見直す方法もあるが、今度は労働者がその制度を受け入れるとも思えない。次世代の労使関係の新たな形の構築が望まれている。
ところで、長寿化によって老後の健康面を支える社会保障費も気になるところだ。
「社会保障費は毎年1兆円ほど増えています。ただそれは経済成長でカバーできる。GDPが実質的に1%上昇すれば、税収は2兆円以上増えます。そうすれば増税しなくても、経済成長によって社会保障費増の負担に耐えられるのです」(田村秀男氏)
同時に「選択と集中」の必要性を説くのは、渡邉氏である。
「社会保障の適用はまんべんなく行われています。しかし、ここにも選択と集中が必要な時代が来ています。保険適用できる内容を選ぶ議論をするべきでしょう」
高齢者を票田とする選挙では、こうした“痛み”を伴う現実をつきつける政党はなかった。