この選挙で17年4月に消費税10%延期が決まった。導入されれば景気が冷え込むことは確実と言えよう。それに耐えられるだけの好景気の実現には、来年の景気が好循環となり、再来年はさらに成長し持続できるかが鍵である。
しかし現在、円安によって、物価は急上昇している。日清食品は主力商品を5~8%、文房具用品のコクヨも平均9.5%、来年1月に値上げすることを発表した。総務省の小売物価統計では、11月の輸入牛肉価格は2年前より約3割もアップ。今月17日から吉野家は牛丼並盛を80円=約26%の値上げを決定している。
2年で40円という急ピッチの円安進行に、悲鳴を上げる企業も出始めていると、須田慎一郎氏は指摘する。
「民主党政権時代の円高で、中小零細企業はコストカットを余儀なくされました。今度は急激な円安で素材費が高騰して、利益が出る前に我慢できずに倒産してしまう会社も出ています」
帝国データバンクによると、14年1月から10月の累計で倒産件数は259件。前年同期の約3倍になり、原材料を輸入する企業の倒産が目立ち始めている。しかし、民主党政権の「円高時代」より好転していると渡邉哲也氏は主張する。
「例えばシャープ、松下、ソニーの3社だけで47万人が働いています。下請けや家族まで含めると2000万人近くいます。あのまま円高が進行すれば、倒産して路頭に迷う可能性がありました」
マクドナルドやワタミなど「円安・デフレ企業」が業績悪化で苦戦する中、転換を図っているのは、北海道を拠点とする家具・インテリア製造小売りチェーンのニトリ。急激な円安で仕入れ原価が上がっても、27期連続で増収増益を続けているのだ。
その成功の要因について、「週刊東洋経済」(14年11月22日号)のインタビューで、似鳥昭雄社長(70)がこう答えている。
〈2008年のリーマンショック後から値下げを3カ月ごとに8回してきた。それによって顧客層が年収200万円から500万円ぐらいに偏った。昨年の下期から中の上ぐらいの商品開発を増やし、年収800万円に引き上げる戦略がうまくいっている〉
物価上昇をもたらした円安だが、日本経済へ逆の波及を見せてもいる。日本の不動産が割安になったことで、日本への投資が始まり、12月9日には、米のアップルが横浜市内にアジア最大級の研究開発拠点を設けることがわかった。
「株高になっても世界から見れば日本の株価は割安。今後は日本企業のM&A(合併や買収)が活発になってきます。それだけ日本経済が魅力的になっている証明です」(須田氏)
物価上昇を賃金上昇が追い越せば、市民に多くの恩恵がもたらされる準備はできていると言えよう。