裏金・脱税にまみれる自民党は、岸田文雄首相らが派閥解消を打ち出したことで、派閥の代わりに中堅・若手の国会議員らを育成するためとして、新たな勉強会を立ち上げた。だが、そのピント外れぶりが、かえって浮き彫りになっている。
岸田首相に近い党中央政治大学院(「国及び地域の将来を担うにふさわしい人材を発掘、育成すること」を目的として設置された機関)の遠藤利明学院長(元総務会長)と、小渕優子選対委員長が中心となって動いた。遠藤氏は次のように呼びかけている。
「ひとつひとつの政策もちろん大事だが、世界観、あるいは国家観、あるいは歴史観、こうしたものをしっかり踏まえて、それを背骨にして対処していかなきゃならない。そんな勉強会にしよう」
1回目の3月4日は、齋藤健経産相が「戦前史」をテーマに講演し、中堅・若手の国会議員と選挙区支部長ら、合わせて94人が参加した。
もっとも、党内からは冷笑が漏れており、
「『世界観、あるいは国家観、あるいは歴史観』なんて自分で勉強するものだろう。そもそも、国会議員になる以前に持ってるべきものじゃないのかな。こういうところが自民党のダメなところだと思うんですがね」(松本尚防衛政務官)
これにはさる全国紙論説委員も松本氏の主張に呼応する形で、
〈本当にそう。的外れに世論に迎合しようとして幼稚化する。かつての民主党政権の小沢チルドレンみたい〉
とXに投稿した。
勉強会は政治家としての自覚の欠如をかえって印象付けた。今の岸田自民党の低迷ぶりを象徴しているようである。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)