自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、岸田文雄首相が99人を擁する最大派閥たる安倍派(清和政策研究会)の議員を政務三役から外す案を検討していることについて、保守派を標榜する安倍晋三元首相の「応援団」から、耳を疑う言い訳が飛び出している。
「一連の安倍派叩きの裏には中国がいる。親中派の岸田首相が中国に焚きつけられ、東京地検特捜部を使い、安倍派を追い込んでいる」
すなわち「中国陰謀論」の流布である。もちろんこの問題は中国が裏で動いているというレベルの話ではなく、法律に則って報告せず、裏金と知りつつ懐に入れた国会議員の犯罪的行為。そこに弁解の余地など全くないのだが、なぜ中国陰謀論を主張するのか。こんな論調がSNSに書き込まれている。
〈安倍派一掃を画策する流れは、憲法改正+軍事費倍増を阻止すること…背後に中国が見え隠れする〉
〈パー券裏金問題を提起して安倍派一掃を狙う政治勢力が、検察を味方に内閣を機能不全にしている。中国には千載一遇のチャンス〉
いずれも安倍元首相を信奉する「保守勢力」によるものだが、
「岸田首相がこの危機をどう乗り切るか、手腕の見せどころですが、保守勢力にとっても安倍派の勢いがなくなると、食いぶちは減るでしょう」
こう話すのは、自民党国会議員秘書である。今回のスキャンダルによって、政治課題として完全に消えてしまうものは「憲法改正」だという。この秘書が続ける。
「政治資金規正法をきちんとしたものにせずに、憲法改正を持ち出そうものなら、国民から『常識はずれ』と糾弾される。困るのは保守系文化人と、保守系言論誌です。中国脅威論と憲法改正はワンセット。今回のパー券裏金問題も、中国脅威論と結び付けないと原稿がなくなりますから」
全国紙政治部デスクが、安倍派の今後に言及する。
「この問題で安倍派は『日本の将来を憂う国士の集団』ではなく、単なる金儲け集団とみなされることになった。そのイメージダウンは大きすぎます。中国・北朝鮮脅威論などを持ち出したところで、しょせんは利権絡みだろうと思われる。応援団も同様です」
安倍長期政権時は「憲法改正」を声高に叫んでいた知識人にとっても、安倍派パー券裏金問題は、「大きな節目」となるだろう。
(健田ミナミ)