自民党の総務会長といえば25人の総務を束ね、党の常設の最高意思決定機関のトップとして、それなりの存在感を発揮するものだ。ところが現在の遠藤利明総務会長はさながら、岸田文雄首相の「応援団長」となっている。
それもそのはずで、谷垣派に所属しながら2020年と21年の党総裁選では、宏池会会長である岸田首相の選挙対策本部長を担った。「隠れ宏池会メンバー」と言っていい。
その遠藤氏は7月26日の講演で、茂木敏充幹事長が次の内閣改造・党役員人事で幹事長を続投した場合、来年9月の党総裁選には出馬しづらくなる、との認識を示した。現在67歳の茂木氏にとって、次の総裁選は事実上のラストチャンスといえる。茂木氏も出馬への意欲を隠さないが、一方で党のカネを握る幹事長ポストは続けたい、との欲を持っている。
遠藤氏はそれを見透かした上で、
「幹事長は総裁と一体だ。否定するのはよほどの何かがないと難しい」
と茂木氏を牽制した。
人望はないものの、事務処理能力には長けている茂木氏。遠藤氏はさらに、
「茂木氏が他のポストに行った時の(岸田政権の)不安定さをどう見るか。(首相は)まだ判断がついていない」
茂木氏の処遇について、岸田首相が悩んでいることを明かしたのだった。
内閣改造時期には8月下旬か9月中旬を挙げて、
「日程では9月中旬がいちばんリーズナブルかもしれない」
と語った遠藤氏。もちろん遠藤氏は総裁選での岸田再選を支持しており、衆院の解散・総選挙の時期は、再選に向けて見定めるべきとして、次のように言及している。
「2025年の衆参両院の同日選まで、多様な選択肢がある」
遠藤氏は「エントシ」の愛称として知られ、その丸顔から敵が少ないように見えるが、とある閣僚経験者が揶揄するには、
「今では岸田首相の軍師気取りのようだ」
本来は総務会を仕切る立場として、公平さが求められる総務会長。その発言としてはふさわしくないと、遠藤氏に対する批判が出ているという。この閣僚経験者はさらに、
「そもそも谷垣派と自称しながら、わずか21人しかいない。しかもそのうちの12人は重複で、正確には9人。それで政局を動かしているような発言をするのは分不相応だ」
そう言ってコキ下ろすのだった。