2026年の北中米W杯アジア2次予選。北朝鮮との2連戦(3月21日・国立、26日・平壌)に挑む日本代表メンバーが発表された。
海外組はシーズン終盤を迎えたこともあり、ケガ人が続出。故障を抱えている三笘薫、冨安健洋、中山雄太、旗手怜央がメンバーから外れ、プライベートなスキャンダルを抱える伊東純也も選外。代わりに田中碧、相馬勇紀、橋岡大樹、川村拓夢らが代表復帰した。
細谷真大はパリ五輪出場を目指すU-23日本代表に専念させるため、代わりにオランダリーグで好調な小川航基が復帰。GKも野澤大志ブランドンはU-23代表に選ばれ、代わりに大迫敬介が復帰した。
初招集の選手がいないし、ベースはアジア杯からの継続で大きく変わることはない。対戦相手の北朝鮮は、負けてはいけない相手。2次予選でのつまずきは許されない。
そんな中、世論をざわつかせたのが、37歳の長友佑都が約1年4カ月ぶりに代表に復帰したことだ。では、今回の長友の役割は何か。森保一監督は、
「チーム内外で存在感を発揮してもらえば」
と言っていた。
カタールW杯を目指していた森保ジャパン時代、長友はムードメーカーとして存在感を示していた。圧巻だったのは、アジア最終予選。9月の初戦、ホームでのオマーン戦に0-1で敗れ、アウェーの中国になんとか1-0で勝った。そして10月の3節目、アウェーのサウジアラビアに0-1で敗れ、1勝2敗と最悪のスタート切った。そんな沈みかかったチームを盛り上げたのが、長友だった。
「最終予選はこれからが本当の勝負だ」
「下を向くな。やってやろうじゃねえか」
毎日、チームを鼓舞し続けた。悩んでいたり大人しい選手を見つければ、
「元気出していこうぜ。もうやるしかねえ」
そう言って無理やりでもチームを盛り上げ、選手を笑顔に変えていった。
そして中3日で迎えたオーストラリアを2-1で退け、そこからの快進撃でW杯出場を決めた。今回もムードメーカーとして期待されている。特に平壌でのアウェーは森保監督が、
「おそらく、想定外のことがたくさんあると思う」
と言うように、考えられないことが起こる可能性は十分にある。
今の代表選手は真面目でおとなしい選手が多い。アジア杯でも、負の連鎖から立ち直れなかった。だから長友のように何が起きても動じず、チームを立て直せる選手が必要だったのだろう。
今季の長友は、ひと味違う。開幕から4試合連続スタメン出場を果たし、第4節の福岡戦では1ゴール1アシストの活躍。昨季に比べても数段、コンディションがいい。オフからキャンプにかけて、相当の努力をしてきた証拠だ。
この2連戦のどこかで、ピッチに立つ可能性は十分にある。特に異様な雰囲気の中で行われるアウェーの試合では、国際Aマッチ142試合出場という長友の経験が、絶対に生きる。
過去、平壌で行われた試合は2分け2敗と、まだ勝利がない。37歳のベテランが初勝利の立役者になるか。期待したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。